高齢男性のグリーン車「席を譲れ」騒動 「自由席」は「三等車」でいいのでは(中川淳一郎)
8月28日、旧ツイッターのトレンドワードに「席を譲れ」が入りました。鉄道旅行をしていた男子大学生がのぞみ号グリーン車の席に座っていたところ、自由席の券を持っていた高齢男性から「席を譲れ」と言われ困惑したというニュースがきっかけです。周囲の乗客と車掌が高齢男性をなだめ、騒動は収束したようです。
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昨今、「老害」扱いして高齢者を悪者にする記事がアクセス数を稼ぎますが、この件はさまざまな示唆に富んでいます。ネットのニュースを編集していた立場からよく分かるのですが、仮に「高齢女性から『席を譲って下さる?』と言われ困惑」だとここまで炎上はしない。
ネットの反応としては「おばあちゃん、そこはグリーン車だよ(笑)。自由席は前の方だよ」といった反応になったことでしょう。「高齢男性」が「席を譲れ」だったから猛烈に批判されたのです。
当件に対し、「自由席券=自由に席を選べると勘違いしているのでは?」というコメントがありました。新幹線に慣れていない人や、認知症であればその可能性はあります。と考えると、ネーミングが悪い。もう自由席は「三等車」、少し値段が高い指定席は「二等車」、値段がドーンと上がるグリーン車は「一等車」か「特等車」にすればいいのではないでしょうか。海外の鉄道ってそうなってますよね。飛行機だって「エコノミー」「ビジネス」「ファースト」と明確な階級差をつけているので特に違和感はないのでは。
日本語で金額に対する妙な配慮ってもうやめていいんじゃないですかね。すしの「松竹梅」という表記も「梅を注文するお客様が恥ずかしい気持ちになるかもしれない」とかいう理由で「雅」「花」「月」などに変更する店もある。
電車の「優先席」はかつては「シルバーシート」と呼ばれていました。通常の席とは異なり、銀色に見えなくもない灰色だったためです。しかし、この席は高齢者だけでなく障害者や妊婦、負傷者なども利用しやすいよう名称を「優先席」に変更。高齢者のことを「シルバー」と呼ぶ和製英語はこの席が由来とされていますが、この言葉もなんだか気持ち悪い。「高齢者」でいいじゃないですか。ちなみに「老人」も今や差別用語的ニュアンスがあるため使いづらい言葉になっています。
冒頭のグリーン車問題に戻りますが、件の高齢男性がなぜこの大学生に席を譲るように言ったのかを考えると「若いくせにグリーン車に乗るなんて生意気だ」という気持ちもあったのでは。思い出されるのがタレントの辻希美さんが家族で新幹線に乗った写真をブログに掲載した時のこと。小さな息子がグリーン車の席であぐらをかいている写真もありましたが、これが非難の対象に。
当時辻さんは何を書こうが2ちゃんねるで批判をされていました。「やたらと食事や弁当にウインナーが多い」という、どうでもいいことでもたたかれていた。この新幹線の時は「あぐらは行儀が悪い」もありましたが、いやいや、息子さん、小さいからあぐらかくしかないでしょう。「子供をグリーン車に乗せるのはぜいたくだ」というのもありました。いや、他人のカネの使い方に文句言うなよ。