国名変更を画策か…インドは大国意識に目覚め、「中国も恐れるに足らず」の危険度

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習氏のG20欠席はインドの面目をつぶした?

 2012年11月15日、中国共産党中央委員会総書記に選出されたばかりの習国家主席は、「中華民族の偉大な復興の実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢だと思う」と語った。いわゆる「中国の夢」演説だ。

 これ以降、中国国内では「強国に返り咲いた今、過去の屈辱を晴らす べき」との風潮が高まった感がある。対外的には強硬路線が目立つようになり、周辺国の摩擦を強めた。

 大国意識に目覚めたインドも、同じ道を辿るのではないかとの不安が頭をよぎる。

 現在のインドにとって英国以上に許せないのは中国だろう。1962年の国境紛争で中国に大敗したことが、独立後のインドにとって最大の屈辱だからだ。

 その中国がインドにとって国威発揚の絶好の場であるG20サミットを台無しにした。これまで欠かさず出席していた習氏が欠席したのだ。

 欠席について様々な憶測が流れているが、習氏は9月7日、洪水被害に遭った黒竜江省を訪問し、被災者を見舞っている。このためにG20は欠席せざるを得なかったのだろうが、「グローバルサウスの盟主の座を巡って争うインドの手柄を上げさせたくない」との思いがあったことも確かだろう。

 2020年の国境係争地での軍の衝突以来、急速に冷え込んでいる中印関係が、習氏のG20欠席でさらに悪化する中、漁夫の利を得ようとしているのは米国だ。

中国に対する強硬路線に舵を切るのは時間の問題か

 ジョー・バイデン米大統領とモディ首相はG20サミットに先立って会談を行い、「両国は民主主義的な価値観や半導体のサプライチェーン(供給網)など幅広い問題で協力する」との共同声明を発表した。9月9日付ブルームバーグの記事によると、米政府高官は「中ロ首脳のG20欠席はインドを著しく失望させたが、我々の存在に謝意を示した」との見解を述べている。

 米国は無人航空機の調達を求めるインドの要請に積極的に応ずる姿勢を示す(9月9日付日本経済新聞)など、中国の脅威を念頭に安全保障面での協力も深めようとしているが、その緊密ぶりには目を見張るものがある。

 9月8日付ブルームバーグによると、中国の台湾侵攻を想定し、米国からインドへ「どのような貢献ができるのか」という非公式の問い合わせがあったという。インドの選択肢の1つは、軍艦や航空機の修理・整備施設や物資を提供する後方支援拠点だ。驚くべきことに、北方国境沿いで軍事的な関与を強めた場合、中国がこの戦いに対応せざるを得なくなる可能性まで分析しているという。

 大国意識が高まり、米国という強い味方も得た現在のインドにとって、中国は「恐れるに足らず」になりつつある。かつての汚名をそそぐために、中国に対する強硬路線に舵を切るのは時間の問題ではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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