国名変更を画策か…インドは大国意識に目覚め、「中国も恐れるに足らず」の危険度
首脳会議宣言の未採択という史上初の事態は回避
9月10日、インドの首都ニューデリーで開かれていた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が閉幕した。ウクライナ情勢を巡る対立を受け、首脳宣言の成立が危ぶまれていたが、予想に反して開幕日の9日に全会一致で採択された。
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首脳会議宣言の未採択という史上初の事態を避けるため、全方位外交を続けてきた議長国インドの必死の努力が実ったわけだ。だが、ウクライナ戦争についてロシアを名指しした批判はなく、昨年の宣言に比べて内容が後退した感は否めない。
インドは今回のG20サミットを是が非でも成功させ、国際社会の中で存在感を高めようと躍起になっていた。主な成果は、インドが主導する形でアフリカ連合(アフリカ55カ国・地域で構成する世界最大級の機関)の正式なメンバー入りが決まったことだ。「グローバルサウスと呼ばれる途上国・新興国の声をG20に反映させる」という、ナレンドラ・モディ印首相の公約が達成できた形となった。
今回のサミットは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が欠席するという異例の展開もあった。
一方、筆者が注目したのはインドの「国名変更」に関する動きだ。
インドが国名変更? 植民地時代の負の遺産を払拭へ
G20サミットで、モディ首相の議長席に置かれた英語の国名プレートは「インド」ではなく「バーラト」だった。サミットの公式夕食会の招待状も「バーラト」大統領名で出されており、「インドは国名をバーラトに変更するのではないか」との憶測が広がっている。
インドの憲法上では、英語の「インド」とヒンディー語の「バーラト」の両方が正式な国名だが、国際会議などの場では「インド」が使われてきた。「インド」は英国植民地時代の呼称、「バーラト」は古代インドの伝説上の王バラタの領土を意味するサンスクリット語であり、植民地時代以前から使われてきた呼称だ。
モディ首相率いる与党インド人民党(BJP)はヒンズー至上主義を掲げている。BJPの支持団体である「民族義勇団」は「バーラトの呼称を広く使うべき」と主張していることから、国名変更の動きは来年4月の総選挙を念頭に置いた政治的な布石だとの指摘がある。
人口約14億人の8割を占めるヒンズー教徒の支持を得て、BJPが総選挙で勝利する戦略だというわけだ。この見方が正しければ、総選挙の終了後にこの一件が落ち着く可能性は高い。だが、筆者は「名実ともに大国となったインドで植民地時代の負の遺産を払拭する動きが加速するのではないか」と考えている。
そこで思い出されるのは約10年前、日本を抜いて世界第2位の経済大国となった時の中国だ。
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