日大アメフト部“底なし”大麻事件のウラで「危険タックル」元コーチが敗訴 「除名は死刑に等しい」と指導者復帰を訴えるも門前払い
「除名は死刑に等しいもの」
実は提訴の約1か月前、一度は懲戒解雇された日大に井上氏は復職。ただし専任コーチとして“一筋”でやってきたアメフト部とは無縁の同大歯学部学生課に配属された。この奇異な人事の裏には、関東アメフト連盟による「コーチ資格の剥奪」が影響していると指摘する声もある。(日大は現在の井上氏の仕事内容などについて「回答を差し控える」とした)
井上氏は訴状で、連盟の処分が不当である理由をこう述べた。
〈原告は監督ではなく、ディフェンスコーチの一人にすぎず、ディフェンスコーチの中での責任者的な立場にはない。それにもかかわらず(中略)ディフェンスコーチの責任者であるAコーチよりも厳罰の除名処分を科した。しかも除名処分は死刑に等しいものである〉
ここに出てくる「Aコーチ」もタックル問題に絡んで無期限の登録抹消処分を受けた一人だが、連盟は20年3月、「真摯に反省し、再発の恐れはない」としてA氏の処分を解除している。
〈原告は責任者の立場にないディフェンス担当コーチであったにもかかわらず、除名処分により指導者失格のレッテルを貼られたまま復帰の機会すら与えてもらえないのは(A氏とくらべ)あまりにも均衡を失することは否めない〉
対して関東アメフト連は準備書面などで〈除名処分は有効であり(中略)原告の請求には理由がなく、速やかに棄却されるべきである〉と応戦。2年以上にわたる裁判闘争の末、今年7月18日、東京地裁は判決を言い渡した。
宙に浮いた「責任」の所在
判決で井上氏の請求は棄却されただけでなく、〈原告は関学大のQBに怪我をさせることを意図して、選手に対し、関学大QBを「潰す」よう指示したものと認められる〉と認定。さらにコーチとしての地位確認についても〈(資格の有無については)「法律上の争訟」に当たらないから、不適法なものとして却下を免れない〉と“門前払い”の判断を示した。
井上氏側の代理人弁護士に判決に対する見解などを求めたが、「お答えできない」との回答だった。一方、関東学生アメリカンフットボール連盟は「個別の係争に関して、こちらから申し上げることはない」と話した。
前出の日大関係者が語る。
「日大は内田監督についても、裁判所からの勧告を受けて19年12月、懲戒解雇処分を取り消して和解に至っています。あれだけ世間を騒がせておきながら、“指導者側の責任が曖昧にされたまま手打ちが行われた”と指摘されても仕方がない。刑事事件にならなかったという理由で“灰色決着”に落ちつき、肝心のタックル問題の総括や検証、再発防止策の構築がウヤムヤになった部分は本当になかったのか。この時の“負の遺産”がいまに引き継がれ、まるで大麻事件となって姿を現したかのようだ」
愛称である「フェニックス(不死鳥)」のように、日大アメフト部が再起する日は来るのか。