【ハヤブサ消防団・最終回】立木彩は「聖母アビゲイル教団」の聖母になるのか 本当の目的は?

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新興宗教の信徒を特別視しない

 ドラマも原作も、テーマの1つは「宗教とは何か」にほかならないが、省吾ら新興宗教の信徒を特別扱いしないところに好感が抱ける。

 このドラマは決して、新興宗教を否定しようとしているわけでない。賢作も5話で「新しい宗教は悪いわけじゃない」と強調した。救われる人もいるのだから。しかし、法令違反の行為を行ったり、他人の生活を脅かしたりする宗教は、新旧を問わず決して許されない。これが、このドラマが訴えたいことの1つに違いない。

「聖母アビゲイル教団」の場合、計4件の放火を行い、放火犯に気づいた山原浩喜(一ノ瀬ワタル・38)を殺害した。前身の「アビゲイル騎士団」と同じく反社会的だ。彩はそんな教団の聖母になり、ハヤブサ地区を占拠するつもりなのだろうか。

 中山田は彩が聖母となることに懐疑的である。8話では、いつも無責任な発言ばかりしている中山田が、真面目な物言いで「気になるんだよなぁ、彩さんの本当の目的」と語った。中山田の疑問は核心を突いている気がする。

 彩は東京のテレビ番組制作会社に在籍時、やりがいもプライドも搾取される環境で働き、数々の屈辱を味わった。心がすり減った時、高校時代からの友人・滝川明日花(金澤美穂・28)に誘われて「アビゲイル騎士団」に入信し、救われた。

 その明日花は教団内の拷問事件によって死んでしまった。体質を受け継いでいる「聖母アビゲイル教団」の聖母が務められるのだろうか。最終回は彩の選択が大きな注目点となる。

 省吾殺しの犯人も最終回で明かされる。太郎や省吾ら6人が上京していた際、都内でタクシーに乗車したのは真鍋と若い女性だった。筆者には女性の見た目が展子に思えたが、本人は生きていたら60歳を過ぎているから、肉親か。

 多くの謎を残したまま最終回を迎える。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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