ジャニーズ事務所が社名変更しなかった特別な事情 会員1300万人、会費総額520億円の“ファンクラブ問題”があった
「姪として責任を取る」同族企業色が鮮明に
また、被害の全容把握はこれからなのだから、「みんなが(性加害によって)今、スターになっているわけではなく」と言うのは早計過ぎる。再発防止特別チームは、ジュリー氏を始めとする役職員たちには性加害をなかったことにする意識があると指弾したが、その通りだった。
会見ではジュリー氏の同族企業的思考が鮮明になる場面もあった。補償問題に触れた時である。
「叔父(のジャニー氏)の起こした問題ですので姪として(私が)責任を取りたいと思っております」(ジュリー氏)
多くのビジネスパーソンは耳を疑ったはず。同事務所の社員数は200人以上でタレントも100人以上。いくら同族企業であろうが、公の場で「叔父」「姪」の呼称はあり得ない。まるで個人商店だ。
これではジュリー氏が経営から離れず、株式を100%持ち続けるのも不思議ではない。おそらく「自分が相続した商店」という認識なのだろう。再発防止特別チームが同事務所を「深刻なガバナンス不全」と批判したのもうなずける。
この会見には企業も失望したようで、直後に日本航空はジャニーズ勢のCM起用を見送ることを決めた。東京海上日動火災も「嵐」の相葉雅紀(40)のCMを契約更新しないことにした。他社もCM契約打ち切りを検討している。各社とも国内外の世論や他社の動向を気にするから、雪崩を打つように同調するのではないか。
CM契約継続なら、世界的企業は海外で糾弾されかねない
同事務所に所属するタレントのCMの契約金で一番高いのは木村拓哉(50)で、基本的に年間8000万円。国内タレントではトップクラスだ。ほかにも年間3000万円、4000万円クラスなどがいる。
芸能界の常識では契約金のうち7割を同事務所が取り、3割が本人の収入となる。本人の取り分が少ないように思えるものの、俳優など本業の稼ぎが別にあるから大きい。これが消失すると、大打撃になる。
ファンの中には「タレントに罪はないのに」とスポンサー側を責める向きもあるようだが、国際基準と照らし合わせると、やむを得ない。欧米では少年少女への性加害者は重罪人との認識で一致している。
CM契約を続けたら、世界的企業である日航、東京海上は海外で糾弾されかねない。なにしろ国連人権理事会まで動いた問題なのだ。
2年前、米国で4人の少女に性加害を働いた30代の男には懲役275年が言い渡された。2019年には英国の刑務所内で約200人の少年に性加害を行った30代の男が殺された。
東山はジャニー氏の行為を「人類史上、最も愚かな事件」と評した。期間や規模、手口を考えると、その通りではないか。東山は国際標準を調べていたのだろう。
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