【ドイツ戦】森保監督は公言通りの戦いで圧勝、名将・クリンスマン監督を招聘しても結果の出ない韓国代表との違い
日本代表のレベルアップ
しかし、カタールW杯の経験値に加え、新たな外国人監督を招聘するのではなく“続投”となったことで、チームのコンセプトが継続され、さらに進化していることがドイツ戦で感じられた。ドイツの攻撃で脅威となっていたのは、右FWのテクニシャン、レロイ・サネのドリブル突破だけ。前半は左FW三笘薫がよく戻り2対1の状況を作ろうとしていた。
そして後半から森保監督は5BKを採用して守備を厚くしつつ――45分間耐えきれるか見物だったが――カウンターからの追加点を狙うスタイルに切り替えた。意外だったのは、後半のドイツは日本に「手も足も出なかった」ことである。サネや左FWセルジュ・ニャブリに突破を許さず、1トップのカイ・ハーバーツは、イングランド・プレミアリーグ、アーセナルのチームメイトであるCB冨安健洋が完封した。
昨シーズンは久保建英がスペインのレアル・ソシエダで、三笘がプレミアリーグのブライトンで確たる地位を築く活躍で、チームをUEFAチャンピオンズリーグ(CL)とUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場に導いた。彼ら以外にも、鎌田大地はイタリア・セリエAのラツィオへ、上田はオランダのフェイエノールトへとステップアップした。今回招集されたメンバーのうち、11人がCLとELの出場権を獲得したチームに所属している。
こうした選手個々の目に見えるレベルアップに加え、チームとしての継続性が戦術理解度の浸透につながっている。ここらあたりが、隣国のライバル韓国はユルゲン・クリンスマンを監督に招聘しても、2分け3敗と結果を出せずに苦しんでいる一因ではないだろうか。
“死んだふり”だった久保
さらにもう1点見逃せないのは、森保監督はドイツのブンデスリーガに所属しているか、過去に所属していた8選手全員をピッチに立たせたことである。対戦相手を肌感覚で知っているというアドバンテージもあっただろう。それと同時に、ドイツの地でピッチに立てるということでモチベーションもかなり上がったことは想像に難くない。それがCF浅野拓磨やボランチ田中碧のゴールに繋がったのではないだろうか。田中のヘッドによるゴールは初めて見た。
最後に特筆したいのは、久保である。後半30分からの出場で、気負っていたのか右サイドからのカットインで突破を試みたものの、2人がかりのマークで奪われた。すると久保はボールを追って猛ダッシュを開始し、左サイドまで追いかけていった。そしてその後は無理に突破を狙わず、浅野や右SB橋岡大樹らとのパス交換で時間を使った。しかしこれは、“死んだ振り”だったようだ。
後半45分CBロビン・ゴゼンスへのヨコパスを奪うと、ドリブルでカウンターを仕掛けた。スペースがあるため足元でのドリブルではなく、スピードの出る蹴るドリブルで突進すると、GKの直前で減速。自分でもシュートを打てただろうが、左を向いてフェイントをかけてもGKマルクアンドレ・テアシュテーゲンは飛び込んでこないため、フォローしてきた浅野に出して確実にゴールに結びつけた。
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