“教授からのお触り”“論文横取り”で鬱病に… 元レースクイーン東大院生の「ブラックラボ」被害告白
“ジャイアン助教”からのハラスメントで過食に…
結局、データの管理がずさんであったり問題を抱えていたことが大学側にバレ、ラボ自体が閉鎖された。心も体もボロボロになったレイナさんだが「絶対博士号を取って見返してやる」との思いを強くした。新たに別の研究室へと移ったが、不幸にもそこもブラックラボだった。
「教授は良い人だったんですが、助教はジャイアンみたいな人で……。私が発表した研究データを『俺が教えたんだから、お前のデータは俺のものだ』と言い始めて、するとその助教が私のテーマを、私の名前抜きで自分の論文として発表してしまったんです。ずっと頑張ってきたのに、このままでは博士号を取れないかもしれないと、そのときは鬱病になりました」
さらにレイナさんは助教からのハラスメントのストレスから過食となってしまう。
「東大の周りには美味しいラーメン店が多いんですが、その頃はストレスからラーメン二杯とか普通に食べていました。研究室に行ってストレスを抱えて、そのストレスからラーメンを食べて、また研究室でストレスを抱えることの繰り返し。糖尿病にもなりかけて、今も糖尿の薬を使っています」
絶望の淵にいたレイナさんだが、友人に相談したところ、「それはアカハラだ」となり、友人は自分の研究室の教授にその状況を伝えた。すると大学院内でも大きな問題となり、レイナさんは再び、ほかの研究室へ移動できることになった。
次は「心臓の研究室にいたときに、ゴキブリとミツバチの研究室の授業がすごく面白かったし、もともと昆虫が小さい頃から好きだったので」と昆虫の研究をする研究室に移動した。レイナさんは「昆虫のラボは大変素敵なラボで、真っ当なサイエンスを伸び伸びできる環境でした」と振り返る。その一方、問題のあった研究室はやがて閉鎖された。
レースクイーン兼大学院生の日々
レイナさんはブラックラボのストレスから解放されたことをきっかけに、一念発起して東大内にあるジムで体を鍛え始めた。ダイエットに関する論文を読み、食事は糖質制限、水を2リットル飲むようにすると体重はみるみると下がっていき、半年で16キロもの減量に成功した。その甲斐あって、ある一つの夢が叶う。
「レースクイーンという仕事に20歳ぐらいからずっと憧れていたんです。当時は20代ギリギリで年齢的にレースクイーンとしての旬な時期は逃していました。でも、あきらめきれずオーディションに応募し、2021年には4輪のスーパー耐久選手権、2輪の全日本ロード選手権でレースクイーンになることができました」
とはいえ、あくまでも研究は最優先。レースクイーンやほかの芸能活動をした後の夜、ラボに戻り、研究テーマであったゴキブリの脳を調べ、翌日に進捗を発表するようなハードな日もあった。ただ夢であった博士号は厳しい状況に追い込まれていた。ブラックラボにいたことで時間が奪われていたのだ。
「オーバードクターと呼ばれる博士課程の留年が通常は3年が多く、中には無限にいられるところもあるのですが、東大の理学部は2年と決まっているんです。それでも普通の学生なら学部3~4年生の1年間、修士課程の2年間、博士後期課程の3年間に加えてオーバードクターと呼ばれる2年間で、計8~9年間同じテーマで研究できるのです。でも“ジャイアン”のいる研究室をやめたとき、私には博士論文のテーマに使える時間がオーバードクターの2年しかなかったんです」
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