優勝争いやCS争いを左右した「疑惑の判定」 星野仙一監督は試合後に“巨人びいき”の審判を襲撃!「誰に頼まれたんや。汚いぞ。公平にやれ!」と大激怒

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「巨人はお上に守られている」

 首位攻防戦での相手有利判定に激高した“闘将”が試合後、審判に蹴りを入れる事件を起こしたのが、1996年9月20日の巨人対中日である。

 試合前の時点で、巨人と広島が69勝51敗で同率首位、中日も65勝53敗と3ゲーム差で追う三つ巴のV争い。逆転Vを狙う星野仙一監督は巨人との直接対決で連勝し、一気に差を詰めるつもりだった。

 だが、皮肉にも、シーズン中、「巨人はお上に守られている」「(判定を)きちんとやっていれば、ウチは10点入っとるよ」などと巨人有利の判定に何度も不満を爆発させてきた星野監督は、この日も判定に泣かされることになる。

 1対2の7回、パウエルの内野安打と思われた遊ゴロを上本孝一一塁塁審にアウトと判定され、無得点。4対4の延長10回2死満塁の勝ち越し機でも、代打・彦野利勝がバットを止める動作をした際に、上本塁審にスイングを取られ、直後三振に倒れた。その裏、犠飛でサヨナラ負けを喫し、この結果、巨人が単独首位に躍り出た。

 怒り心頭の星野仙一監督は、試合終了直後、ベンチ裏通路で上本塁審を待ち伏せし、「アホウ、誰に頼まれたんや。この期に及んで汚いぞ。公平にやれ!」と食ってかかった。田中俊幸審判が止めに入ると、もみ合いの中で同審判の左膝を2度蹴った。混乱の中でたまたま当たったもので、意図した暴行ではなかったが、連盟から厳重戒告と制裁金100万円の処分を受けた。

 同年は首位・広島から最大11.5ゲーム差離されていた巨人が夏場以降猛チャージ。日本全国で「メーク・ドラマ」と巨人の大逆転Vを熱望するムードが高まっていた。「審判も知らず知らずのうちにマインドコントロールされているのでは?」と感じた星野監督は、この事件で一石を投じることによって、そんな風潮に歯止めをかけたかったようだが、最終的に巨人に5ゲーム差の2位でシーズンを終えている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。