【VIVANT】見捨てられた乃木一家、テントの土地購入、憂助の表の顔…共通するキーワードが終盤のカギ 真相を知った野崎はどう動く

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 TBS「VIVANT」(日曜午後9時、10日は同9時半)は残すところ2回。観る側の考察熱は冷めていないが、そろそろ物語の全体像が浮かび上がってきた。カギとなるのは、バルカ共和国の豊富なエネルギー資源とそれに頼る日本という構図。最終的には「国益」と「個人の幸福」のどちらが優先されるべきなのかが問われるのだろう。

「エネルギー」がキーワードだった

「VIVANT」という物語の全体に横たわるキーワードは「エネルギー」。数々の謎に目を奪われて見えにくくなっていたが、最初からそうだった。

 主人公・乃木憂助(堺雅人・49)は自衛隊の秘密情報部隊・別班の一員だが、丸菱商事エネルギー開発事業部2課長の顔も持つ。バルカ国内の太陽エネルギープラント事業を担当し、そのために誤送金問題に巻き込まれた。バルカは豊富なエネルギー資源が地下に眠る国でもある。

 一方、憂助の父親でテロ組織・テントのリーダーであるノゴーン・ベキこと乃木卓(役所広司・67)が40年前にバルカ入りした理由もエネルギー。当時、警視庁公安部員だった卓は農業使節団員と身分を偽って入国し、同国の情勢を探ったが、それは日本がバルカから石炭などを大量に輸入していたからだった。

 そのころのバルカでは4つの民族が対立していた。もし内乱が起きたら、石炭の供給がストップし、日本の国益に関わる大問題になる。だから、卓による諜報活動が必要だった。これは7話で警視庁公安部の野崎守(阿部寛・59)が部員たちに説明した。

 卓は諜報活動を行う一方、農業使節団員としてバルカの砂漠の緑地化に成功する。砂漠を作物の採れる土地に変えたため、住民から英雄扱いされた。ちなみに砂漠の緑地化は地球温暖化の抑制にも役立つ。

 だが、ここで矛盾が生じる。エネルギー資源の採掘は森林伐採を伴うことが多く、それは砂漠の拡大につながる。石炭などの採掘を進めていたバルカと日本の両政府にとって、卓の緑地化事業とそれに対する住民の支持は好ましくなかったはずだ。

 1983年、バルカで内乱が勃発する。翌84年、卓と妻の明美(高梨臨・34)、憂助を救助するため、公安が手配したヘリコプターが飛来するが、3人に至近距離まで近づきながらなぜか引き返してしまった。卓の緑地化事業、それ賛同した住民が両国政府の国益に反する存在だと判断されたからではないか。

 卓ら3人は日本から見捨てられた。それにより、幼かった憂助は人身売買組織の手に落ちてしまう。明美は他界する。

 卓は現在のテントのメンバーに救われた。それが分かったのは、8話のバトラカ(林泰文・51)の言葉から。黒メガネをかけ、民間軍事会社の代表を務める男である。

「ベキを救出した後、もしかすると息子さんが日本に戻っているんじゃないかと――」(バトラカ)

 バトラカに救われた卓はノゴーン・ベキと名を変え、テントを組織したことになる。7話で野崎は、ベキが自分の生存を日本側に知らせていかったことを「最大の謎だ」と言ったが、国から自分と妻子が見捨てられこと、仲間の公安にまで裏切られたことを考えれば、無理もない。ベキは日本と日本名を捨てた。

「ノゴーン」は緑、「ベキ」は魔術師。卓の緑地化事業に由来する。国益より住民の暮らしを思うベキの思想も表されているのだろう。そう考えると、テントの年間収益のうち8000万ドル(約112億円)が、内乱で親を失った子供や貧困に苦しむ子供が暮らす養護施設に費やされているのも腑に落ちる。

 バルカ、日本の両国は現在もエネルギー資源を通じて深く結び付いている。立場は供給国であるバルカが上であるようだ。それを裏付けるように、バルカ全権大使の西岡英子(檀れい・52)は2話で憂助と野崎、医師の柚木薫(二階堂ふみ・28)をパルカ政府に売った。

 日本人の保護は大使館の最優先任務。西岡が外交官として最も恥ずべき行為に走った理由は3話で分かった。バルカ政府の外務相・ワニズ(河内大和・45)は西岡に対し、自分たちに協力しないと日本はアジアでの主権を取り戻す機会を失うと迫った。

 小国のバルカがここまで強気になるのはエネルギーを握っているから。主権という言葉まで持ち出したのは、エネルギーが国家間の覇権争いにも深く関わるためだろう。

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