フマキラー「虫博士」が伝授する“コバエ”対策…発生源「生ゴミ」の臭いを消す意外な方法

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「とにかく目ざわりでウザい虫」――。これが多くの人が“コバエ”に対して抱く印象ではなかろうか。ゴキブリのような不気味さや、蚊のような実害をもたらす存在ではないが、あの小さなボディで素早く飛び回り、視界に入ってくる。手で叩いてもなかなか殺せない。一体こいつらは何者で、いかにして発生を抑え、駆除すればいいのか。「虫博士」として知られるフマキラー開発本部基礎科学研究部部長代理で、理学博士の佐々木智基さんに話を聞いた。

コバエが腐ったものを好む理由

――コバエというものは、文字通り「ハエの小さいヤツ」と捉えればいいのでしょうか?

 はい、そうです。小さいことが特徴で、「ハエ」という名前はいわゆる総称にあたります。大きな括りとして「ハエ目」というものがあり、そこに入るのは全てハエの仲間で、アブやブユ、蚊も含まれます。昆虫は一般的に羽が4枚ありますが、2枚しかない仲間をハエ目、あるいは双翅目(そうしもく)と呼ぶのです。そして、コバエは身近にいる最も小さいハエの総称となります。コバエには、腐った果物や野菜を食べるショウジョウバエ、腐った肉を食べるノミバエがいます。また、腐った土や植物の根っ子などを食べるキノコバエも、コバエに含まれます。

――なぜコバエは腐ったものが好きなんですか? 我々人間が食べたら食中毒になってしまいますが。

「腐る」ということは“分解が進んでいる”わけです。たとえば果物の場合、新鮮な状態だと虫はほぼ糖分しか摂れませんが、分解されると別の栄養素も摂取できる状態になる。また、腐って細胞質が分解されると食べやすいんですよね。コバエにとって噛みやすく、舐めやすい。もちろん、我々人間は腐ったものを食べてはいけません。コバエではないので。

飛びながらも続ける

――コバエはどこからやってくるのでしょうか。

 家の中を飛び回るコバエは基本的に“外から入ってきた”ものです。さきほど挙げた3種類のコバエは、好物とする腐った生ゴミなどの臭いに寄せられて入ってきます。それと、もう一種類、別のコバエがいました。私は時々、こんな質問を受けるんですね、「普段部屋で見るコバエは動きが速過ぎて殺せないが、風呂のコバエは動きがとろくてすぐに殺せる。湿気で羽が重くなっているのですか?」と。これはおそらくチョウバエだと思います。チョウバエは水辺の浄化槽や排水溝などの臭いに釣られて近寄ってきますが、飛翔能力はそれほど高くありません。

 コバエのライフサイクルは、まず交尾から始まります。飛んでいるコバエを殺したときに、2匹がくっついていることがありますが、これは交尾をしていたわけです。普通は飛ばないで交尾をしますが、人間が近付くなど、びっくりして逃げる時は飛びながら交尾を続けます。メスは大体卵を100個ぐらい産み、それが幼虫(ウジ虫)になり、その後、蛹になるとかなり大きくなります。蛹の状態だと成虫よりも大きいですね。ネットでは「コバエの卵だ」と白ゴマみたいなものがびっしりと密集した写真を公開する人がいますが、恐らくショウジョウバエの蛹です。蛹になる時は皮が固く、また厚くなるので、成虫よりも一回り大きくなります。卵の状態だと小さすぎて目には見えません。

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