「日本で革命を起こしたいです」 厚切りジェイソンの「正論」が受け入れられるワケ

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内輪の人間にとやかく言われたくない日本人

 その最大の理由は、彼のキャラクターにある。人に対して助言をするという行為においては、「何を言うか」と同じくらい、またはそれ以上に「誰が言うか」ということが重要だ。厚切りジェイソンのように、流暢に日本語を操り、日本の文化にも理解のありそうなアメリカ人は、日本人の特性や日本社会の矛盾点などを鋭く指摘することができる、というイメージがある。

 そもそも日本人は、周りの目を気にして、和を乱さず 足並みを揃えて生きることを美徳とする傾向がある。仲間内で誰か1人が出しゃばったり、堂々と自分の意見を述べたりすることは許されない。

 ただ、外国人となると話は別だ。外国人は「日本村」という村社会の住人ではないため、引きずり下ろされる心配がない。

 多くの日本人は、外国人が自分たちのことをどう見ているかということに異常なまでに興味を持っている。「外国人の目から見た日本」をテーマにしたテレビ番組や雑誌企画は山のようにある。日本人は、内輪の人間にとやかく言われたくはない。でも、その輪の外にいる人からは何を言われても受け入れられるものなのだ。

息苦しい日本社会に風穴を開ける革命児

 19歳のときに今のパートナーと出会い、交際3カ月で結婚を決めたという厚切りジェイソンは、恋愛でも一切迷うことがない。ウジウジと悩んでいる人の背中を押してくれるような頼もしさがあるからこそ、彼のもとには男性だけでなく女性からも多くの相談が寄せられていた。

 厚切りジェイソンは、最初の著書の前書きではっきりと「日本で革命を起こしたいです」と語っていた。黒船来航から明治維新が起こったように、英BBCの報道からジャニー喜多川氏の性加害問題に火がついたように、日本という国の閉塞感を打ち破るには外圧が欠かせない。

 堅実な節約術と投資術を紹介して日本人の金融リテラシーを高めようとする厚切りジェイソンは、息苦しい日本社会に風穴を開ける革命児なのかもしれない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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