筋トレのやりすぎで「がん」リスク増大? 「週に130分以上の筋トレは逆効果」という実験結果が
筋肉減少の問題は体温が下がること
そのラインを下回らないよう、すぐにジムに行って体を鍛えたほうがいいのかといえばそうではなく、
「例えばお年寄りで座りっぱなしの時間が長いなら立ち上がる頻度を増やすとか、部屋の中にずっといることが多い人は外に散歩に出かけてみるとか、その程度でいいのです。体力や筋力低下のサインとして分かりやすいのは、これまで日常生活で難なくやれていたことができなくなること。例えば以前は駅で階段を使っていたけど、今はエレベーターに頼ってしまう、といったことです」(同)
筋力が一定程度以上低くなると、なぜ死亡リスクが高まるのか。
「筋肉の量が減ると、体温もそれと同じ割合で下がってしまいます。年を取れば取るほど筋肉の量は減り、その分体温も下がっていくのです」
そう語るのは東京都健康長寿医療センター研究所専門副部長の青柳幸利氏。
「体温が上がらないことで一番影響を受けるのが免疫機能です。免疫機能が低下すると、がん細胞やウイルス、病原菌をやっつけることができなくなる。同じ病気でも高齢者のほうが亡くなりやすいのは、免疫機能が低下しているからです。だから筋トレをしましょう、となるわけです」
激しい筋トレの問題点
しかしその筋トレもやり過ぎると死亡リスクが上がることは先に触れた通り。
「1日に2時間も3時間も強度の高い筋トレをやると、横紋筋融解症になりやすい。簡単に言えば筋肉が破壊される症状で、当然ながら寿命を縮めることにつながるでしょう」
青柳氏はそう指摘する。
「あと、激しい筋トレをすると息が上がりますが、あれは急いで酸素を取り込んでいる状態。われわれが酸素を消費すると、そのうち2~3%が活性酸素になります。活性酸素は免疫機能の働きも持っているのですが、残念ながらウイルスや細菌と、正常な細胞の区別がつかないので正常な細胞も傷つけてしまう。細胞が傷つくと遺伝子に傷がつき、それが修復されなければがんになってしまいます」
過ぎたるは猶及ばざるが如し。「論語」の教えの通り、「中庸」が大切なのだ。
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