筋トレのやりすぎで「がん」リスク増大? 「週に130分以上の筋トレは逆効果」という実験結果が
何を食べると健康寿命が縮む、あるいは延びるのか。それを分単位で算出した稀有(けう)な研究論文がある。2021年、「ネイチャー・フード」誌に掲載された、米ミシガン大学の研究者グループによる論文だ。この論文によると、ホットドッグを一つ食べるごとに健康寿命が36分縮むのだという。一方、健康や長生きを目標として取り組んでいる人も多いであろう筋トレ。実はやりすぎるとがんのリスクが増大するという衝撃の研究結果が話題となっているのだ。
やればやるほど健康増進につながるイメージがある筋トレ。しかし、2022年2月、東北大学大学院医学系研究科の運動学分野准教授の門間陽樹氏らが発表したのは意外な研究結果だった。
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「われわれが行ったのは、システマティックレビューという、大量の論文を分析する手法です」
と、門間氏は語る。
「それで明らかになったのは、筋トレを行っている群は、筋トレを全く行っていない群と比較して、総死亡及び心血管疾患、がん、糖尿病のリスクが10~20%低くなる、という結果でした。総死亡、心血管疾患、がんについては、週30~60分実施することで最もリスクが低くなることも分かりました」
具体的には、総死亡リスクが15%、心血管疾患リスクが17%、がんリスクが12%、糖尿病リスクが17%低くなった。ここまでは「予想通り」の結果といえよう。
「糖尿病については筋トレの実施時間が長ければ長いほどリスクが低くなるということが分かりました。その一方、総死亡、心血管疾患、がんについては、実施時間が週130~140分を超えると、むしろリスクが高くなる、という結果になりました」
なんと、実施時間がある一定のラインを超えると、逆にリスクが増すというのである。筋トレはやればやるほど健康増進につながるわけではなかったのだ。
「週130~140分を超えると本当に悪影響があるかどうかは今後、検証する必要があると思います。それよりも、週30~60分の筋トレで死亡リスクが減少する、ということのほうが重要。海外ではそちらが注目されていて、こんな短時間でも十分効果がある、といった切り口で報じられたものが多いです」(同)
「握力が強い人は死亡リスクが低い」という研究も
筋力を一定程度以上に保つことで死亡リスクが下がる。そのことを示す別の研究データもある。九州大学の熊谷秋三教授(当時)を代表とする厚生労働科学研究班が、福岡県久山町に住む40代以上の2527人を約20年にわたって追跡調査して分かったのは、以下の結果だった。最も握力が強い組(男性47キロ以上、女性28キロ以上)は、最も弱い組(男性35キロ未満、女性19キロ未満)に比べ、死亡リスクが約4割も低い――。ただ、
「握力というのはあくまで全身の筋力を測るための指標に過ぎず、握力だけを鍛えても意味がありません」
現・同大名誉教授の熊谷氏はそう話す。
「久山町の研究では、握力の最も弱い組を男性35キロ未満、女性19キロ未満としていますが、それはあまり参考にしなくていいと思います。筋肉の量が減少していく老化現象、サルコペニアの診断基準である男性28キロ未満、女性18キロ未満。ここまで下がらないように気を付けてもらえれば」
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