鬼才監督が振り返る80年代セクシー女優黄金期 「豊丸は控え室で小説を読んでいた」「あいだももは有名なテレビ俳優と…」
あいだももの現場にいた有名なテレビ俳優
何十人と女優さんたちと仕事をしましたが、プロ意識が最も高かったのは冴島奈緒(註・2012年に死去)。彼女はセクシービデオを真面目に「表現」として捉えていた。当時、ロッカーと付き合っていたんで、その影響もあったんじゃないかと思う。芝居も、本物の女優さんみたいに役になりきってやっていました。あの頃は“擬似”で誤魔化す子が多かったけど、彼女は本番だった。
ギャラは一本400万円。メーカーからその金額を聞いて、なんともやるせない気持ちになりましたね。お茶の間でお馴染みの有名女優さんが1カ月かけて2時間ドラマに出演するギャラと同額を、彼女はたった二日で稼いでいたのです。もっとも、それは事務所に入るお金で、彼女の懐に入っていたのは50万円。それも月給制だったので、「何本出ても変わらないのよ」とぼやいていました。
全く逆のタイプだったのは、あいだもも。彼女は男同伴で現場にやってくる。のちにドラマ俳優となったTです。Tは元々男優だったんですが、あいだと出来ちゃって、所属事務所から「責任持ってマネージャーとしてちゃんと面倒見ろ」と詰められ、彼女専属の社長さんになったんですよ。当時はジョージと呼ばれていました。
みんな恋仲だって知っていたし、二人とも「近いうちに結婚するんだ」と公然と振る舞っていた。(註・91年に結婚し、96年に離婚)
樹まり子が漏らした“本音”
ジョージと言えば覚えているのは、お菓子の話。彼が「ももがお菓子食べたいって言っているんですが、買ってきていいですか」と言うんで、財布の中から1万円札を出したんです。そしたら、アイツ、1万円分のお菓子を買ってきて、ベットの上にずらっと並べて……。ふざけんなって思いましたね。彼女の方ものほほんとした子で、男優さんと比べて「ジョージの方が大きいもん」とか平気で言っちゃう子でした。
樹まり子も男優の加藤鷹と付き合っていましたね。彼女、「私、鷹さんと出会うまでは不感症だった」って打ち明けるんです。もうその頃にはバリバリのキャリアを築いていたので、「じゃあ、あれは全部演技だったの」と聞いたら、「何も感じていないから何でもできた」って。
一番緊張したのは豊丸さん。彼女はモンスター系という新しいジャンルを切り拓いた女優で有名だった。名前を忘れてしまいましたが、ある女優を撮る時にメーカーの方から「ゲスト出演」みたいな特別待遇で話が降ってきた。“あの豊丸を撮るんだ”と思うと、始める前からビビっちゃいまして……。
恐る恐る現場に入ったら、控え室で文庫本を読んでいたので腰を抜かしました。そんな物静かそうに見える女性が、いざ本番となると、荒々しい演技をするんです。イメージと違って真面目な人で、ワガママも言わずに「はい、わかりました」って淡々と仕事をこなす人でした。
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