オリックスが三連覇目前!「80億円補強」でも沈没したソフトバンクとはあまりに対照的すぎる“チーム編成”
若手選手が次々に台頭
オリックスのパ・リーグ三連覇が迫っている。2位ロッテに大差をつけてリード。8月26日に優勝へのマジックナンバー24を点灯させ、Vロードを突き進んでいる。昨年オフには長年主砲として活躍した吉田正尚(現・レッドソックス)が抜けたほか、昨季、優勝争いを繰り広げたソフトバンクが80億円といわれる“超大型補強”を敢行したこともあって、プロ野球の評論家のなかでもソフトバンクの優勝を予想する解説者が半数以上を占めていた(※筆者はオリックスの優勝を予想)。だが、蓋を開けてみれば、ライバルのソフトバンクを寄せ付けない盤石の戦いぶりだった。【西尾典文/野球ライター】
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では、オリックスの強さの秘密はどこにあるのだろうか。ターニングポイントとなったのは、やはり2020年シーズン途中に、現監督の中嶋聡が二軍監督から昇格して監督代行に就任したことだ(※2021年から監督に正式就任)。これをきっかけに、投手は宮城大弥や阿部翔太、宇田川優希、野手は杉本裕太郎、宗佑磨、紅林弘太郎ら若手選手が次々に台頭した。
さらに、今季は、最速160キロをマークした山下舜平大が、ローテ入りを果たし、大卒5年目の頓宮裕真が首位打者争いを繰り広げるなど、選手輩出のスピードはとどまるところを知らない。他球団の編成担当は、オリックスの若手育成について、以下のように評価している。
「中嶋監督になってから、トレーニング面を重視するようになり、それに合わせて指導体制を変えたことが大きいのではないでしょうか。日本では、トレーナーといえば、マッサージをするのが主な仕事で、練習面は基本的にコーチが経験則をもとにメニューを決めるということが多いです。最近ではだいぶ変わってきてはいますが、プロでもとても科学的とは思えない練習をしているチームもありますね。オリックスはこれらを見直して、トレーナーの権限を強くした。コーチは、あくまで技術面の向上を手助けするという形をとっていると聞きます。例えば、杉本選手などもそうですが、外部の指導者に師事している選手も多いようですね。そういったサイクルが上手くいって、若手が伸びる土壌ができているのではないでしょうか」(他球団の編成担当者)
指導体制がハード、ソフト両面で充実
この編成担当者が指摘するように、杉本は、日米5ヵ国でプレーした元米3A選手の根鈴雄次が運営する野球塾「根鈴道場」(横浜市)に通い、「鬼ダウンスイング」と呼ばれる打撃理論を学んだ。その結果、2020年にホームラン王に輝くなど、チームに欠かせない存在に成長している。外部の指導者との連携も選手の成長を支えているようだ。
オリックスは、本拠地・京セラドームから車でおよそ15分にある大阪市此花区の人工島・舞洲に総工費30億円を投じて、一、二軍の練習拠点を整備して、2017年3月から運用を開始している。こうしたハード面の充実ももちろんだが、指導体制といったソフト面の改善を図ったことは間違いなく、プラスだったのではないだろうか。
他球団では入団した直後に故障に見舞われることや、プロ入り後に球速が大きく落ちる投手なども目立っているが、オリックスはこうしたケースは少なく、高校卒であっても早く一軍の戦力になっている選手が多い。抜擢できる選手を育てる土壌が、ハード、ソフト両面で整備されて、チーム力の向上に繋がったといえる。
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