夫婦げんかを我慢する人は早死にリスクが2倍に! 夫が妻に先立たれると早死にする科学的理由とは?
怒りのスコアが高い人は病気になりやすい
何を食べると健康寿命が縮む、あるいは延びるのか。それを分単位で算出した稀有(けう)な研究論文がある。2021年、「ネイチャー・フード」誌に掲載された、米ミシガン大学の研究者グループによる論文だ。この論文によると、ホットドッグを一つ食べるごとに健康寿命が36分縮むのだという。一方、食事以外に寿命に影響を与える意外な要素として研究が進められているのが「怒り」の感情だ。
福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授の大平哲也氏らのグループは2020年、「怒りと心血管疾患、循環器疾患との関係」についての論文を発表している。
【写真を見る】食べるだけで「健康寿命が28分伸びる」食品も! 食品ごとの「寿命増減リスト」を公開
大平氏が語る。
「この研究では、20問の質問から怒りのスコアを出し、怒りと循環器疾患との関係を、都会と地方の田舎とでそれぞれ検証しました。すると驚いたことに都会でだけ明らかな関係性が見られたのです。全循環器疾患で見ると、都会では怒りのスコアが高い人は低い人に比べて、1.87倍も病気になりやすいことが分かりました。都会のほうがストレスが多いためだと考えられます」
心筋梗塞や脳梗塞など血管が詰まるような病気とは特に強く関係しており、
「怒りが強い人では、それらの病気になるリスクが2.9倍も高いという結果となりました。ではなぜ怒りが循環器疾患と関係しているかというと、怒ると血圧が上がるからだと見られています。血圧が急激に変化すると血管に負担がかかって動脈硬化が進み、それで脳血管疾患などが起こりやすくなるのではないかと考えられています」
相談できる家族、友達を
つまり、長生きしたければなるべく心を平穏に保つのがいいわけだが、
「アンガーマネジメントというのが一時注目を浴びました。しかし、怒る人、怒りっぽい人が、怒っている時にアンガーマネジメントなんてできませんよね。怒りでわれを忘れているので」
と、大平氏。
「怒りをコントロールするのが難しいのは、それが原始的な人間の機能だからです。昔から動物は、生きるためにストレスがかかれば、ファイト・オア・フライト、戦うか逃げるかしかない。怒りというのはファイト、戦う方であり、動物として生きるために必要なことなのです。動物の本能に基づいているものをコントロールするのは難しいことです」
ではどうすれば怒りが病気につながるのを防げるのか。
「怒りそのものに対処するのは難しいのですが、ソーシャルサポートを得たり、趣味でアクティビティーを楽しんだりすると、怒りと循環器疾患の関係が弱まる、との結果が出ました。ストレスがかかった時に相談できる家族や友達がいる人は“ソーシャルサポートあり”となります。つまり、家族や友達に相談できる人は怒りの度合いが高くても病気になりにくいということです」(同)
[1/2ページ]