栗山監督なら無事だった? 大谷翔平の故障は誰のせいか マドン前監督も驚いた過酷労働
大谷以外誰も二刀流の調整の仕方を知らない
あの大谷が思わず“弱音”を漏らすほど、体は悲鳴を上げていた。原因はこのシーズンに彼が置かれた“特殊事情”にある。
まずはWBC。これに優勝するため、シーズン開幕前に大谷はフルの状態に体を仕上げ、大車輪の活躍をしてMVPに輝いた。
「それに加えて今年は例年と違い、チームがプレーオフ争いに残り、6月頃から負けられない戦いが続いていました。さらに、マイク・トラウト選手はじめチームに故障者が続出し、その意味でも、大谷選手の力に頼らざるを得ず、とても休めない状況だったのです」
起用法を見ても、投手としての大谷はこれまでは基本として中6日の登板だったが、今年は中5日がメイン。打者・大谷もほぼフル出場を続けているのだ。
「通常、選手の起用法は首脳陣が決める。しかし、大谷の場合は、本人の意見が最大限尊重される取り決めになっているのです」
とこれまた“特殊事情”を説明するのは、在米スポーツライターの丹羽政善氏。
「ベーブ・ルース以後、二刀流で成功したのは大谷だけ。彼以外、誰もその調整の仕方を知らないのです。二刀流をやらせる以上、大谷が出たいと言えば、首脳陣はそれに応じることになる。彼以上のことは誰も知らないわけですからね」
前例のないことを行っている以上仕方ないが、その“ルール”にはメリットもあればデメリットもある。
「大谷は性格上、“休ませてください”とはよほどのことが無い限り言いません。毎日試合に出ることが目的で、常にグラウンドにいたい。その上、今シーズンはチームをプレーオフに導けるかもしれず、さらに主力選手の離脱も加わったために、尚更試合に出続けた。結果論ですが、こうしてたまった勤続疲労が、けがにつながった可能性は否めないと思います」
栗山監督だったら…
日本時代であれば、そうした性向を見抜き、ストップをかけられる人物がいた。栗山英樹氏だ。大谷が日本ハム所属時に監督を務めていた栗山氏は、時に厳しく二刀流を管理してきた。
2017年、栗山監督は本誌の取材に述べている。
〈彼(=大谷)の性格で弱点、というより、心配したのは、やり過ぎてしまうこと。「無理です」と言えないことでした〉
〈こちらが出した宿題は何でも「やったります」と言ってしまうんです。極端な話、「全試合打者として打席に立って、ピッチャーもこなせ」と言えば、「わかりました」となっちゃう〉
〈今年、けがをして1軍に帰ってきた時も「大丈夫です」と言って、トレーナー室の前で走っていましたからね。それを聞いて「ふざけんな。やめさせろ」と言いましたけど。その性格の上に、二つのこと(=二刀流)をやっていますから、やはりけがが一番怖かった〉
一方で、エンゼルスの先のGMは8月27日、球団の管理不足を問う記者に対し、「けいれんが出た時に検査の提案をしたが、大谷側が断った」と、責任逃れに走る始末……。
もし指導者が栗山監督だったら……と、「たられば」を言いたくもなる。
「選手は常に“出ます”と言うものですが、それを冷静に見極める判断も必要。エンゼルスの指導者と大谷は何が最善かしっかりとコミュニケーションを取るべきだったと思う」(日本人メジャーリーガー第一号の村上雅則氏)
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