栗山監督なら無事だった? 大谷翔平の故障は誰のせいか マドン前監督も驚いた過酷労働
2回目の手術は成功率が低下
大谷が損傷したのは、右肘の上腕骨と尺骨とをつなぐ、内側側副靭帯だ。これが深刻視されているのは、この部位が大谷の“古傷”であるため。メジャー移籍1年目の2018年、大谷はやはり靭帯を損傷し、「トミー・ジョン手術」と言われる移植手術を受けている。投手復帰は20年だった。
「この損傷の治療方法は二つあります」
とは、「ベースボール&スポーツクリニック」の馬見塚尚孝理事長。馬見塚氏は100人以上のアスリートを治療してきた、スポーツ整形医学の第一人者だ。
「ひとつは手術を行わない方法。これはPRP、いわゆる血小板血漿を傷めた部位に注射し、また、修復のための栄養素を補給し、さらには専門的なリハビリテーションを組み合わせて、損傷した靭帯を回復に持っていく方法です」
もうひとつが先に述べたトミー・ジョン手術。
「これは損傷した靭帯を温存し、そこに体の別の部位の靭帯を移植します」
この手術は内外で数多く行われ、復活の例も少なくない。しかし前述したように、もし大谷がこれに踏み切れば2度目のメスとなる。
「一般論として言えば、もちろん1回目と2回目では2回目の方が難しい。靭帯を固定するために骨に穴を開けますが、2度目の場合は、最初に開けた以外のポイントに穴を作らなければならないため、手技が複雑になる。もっとも技術が進歩し、以前と比べれば2度目といえども成功率は高くなっているのは好材料。投球できるまで回復する『復帰率』は、1回目の手術の場合80%ほどなのに対し、2回目だと10%ほど低下すると見られています」
「極度の疲労が故障につながったのでは」
リハビリの期間は1回目なら1年から1年半だが、2回目だと1年半から2年はかかるという。つまり、手術の場合、投手としての復帰は2~3シーズン後。大谷は現在29歳で、野球選手としては最盛期といわれる年齢にある。彼のキャリアにとって大きな損失となることは間違いないし、さらに、ベーブ・ルース以来100年振りの「二刀流」がストップするという意味ではベースボールの歴史にとっても大損失なのである。
「極度の疲労が故障につながったのではないかと思います」
とは、現地で取材する「Full-Count」編集部の小谷真弥氏である。
8月4日の試合で、投手・大谷は相手打線を4回まで無失点で抑えていたが、右手中指にけいれんを起こし、途中降板した。
「試合後の会見でその原因を聞かれ、大谷選手は“一番は疲労じゃないかと思います”と。思わず耳を疑いました。これまで大谷選手の口から自分が疲れている、という趣旨の発言をあまり聞いたことがなかったからです。いつも“大丈夫です”というタイプ。現場の記者はみな“本当に限界に来ているんだ”と思いました」
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