欧米に比べ…「企業防衛のプロ」弁護士が訴える「物言う株主」規制の法整備
厳正な取り締まり
村上世彰氏が実質支配する「シティインデックスイレブンス」などに、石油元売り大手「コスモエネルギーホールディングス」は20%超の株を買い占められた。その対抗策として、今年6月開催の株主総会で「MOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)」、つまり、「少数派の過半数」という決議方式を採用。シティ以外の株主に無償で新株予約権を割り当てる買収防衛策(ポイズンピル)の是非を問う決議から、シティらを除外したのである。その結果、59.54%の賛成を得て、買収防衛策は可決された。
「MOMは株主平等の原則に反するとの批判も持ち上がりました。しかし、一昨年、輪転機メーカーの“東京機械製作所”でも買収防衛策の採決にMOMを取り入れ、最高裁まで争われた末に正当性が認められた。日本でも条件さえ整えば、敵対的買収者の議決権を一定の範囲で排除できる手立ては辛うじて残されました」
一方、米国では理論上、議決権停止制度は適用可能ではあるものの、その例はない。
「代わりに、大量保有報告規制違反の摘発強化に取り組みました。アルゴリズムを用いた監視体制を整備し、厳正な取り締まりができるようにしたのです」
日本には、手間暇かけずに違法な敵対的買収者を排除する議決権停止制度はなく、証券取引等監視委員会による摘発強化もされていない。企業は無防備な状態で、イリーガルな集団に対峙しなければならないのである。
「週刊新潮」2023年9月7日号「MONEY」欄の有料版では、日本企業が敵対的買収に対抗するための条件や課題を詳報する。
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