【日大アメフト部違法薬物事件】元凶は“保体審(ホタイシン)” OBは「半世紀以上前から問題視されていた。解散しかない」
忘れられない「マッチ」と「合宿の風呂」
ところで、そんな保体審の管理下にある運動部とは、どんな内情なのか。1970年代後半に日大のある運動部に所属していたF氏に回想してもらった。
「練習のきつさとかコーチの暴力やパワハラをいまさらボヤクつもりはありません。オール日大のクラブに入った以上、そんなことは日常茶飯事でしたから。ただ、いまでも忘れられないのはマッチと合宿の風呂です」
そう言って、F氏は持参したマッチを手に説明してくれた。
「当時は運動部にも喫煙者がけっこういました。しかし、コーチや幹部(4年生)がタバコを吸う際、本人に火をつけさせてはダメなんです。彼らがタバコを手にしたら、1年生がすぐに飛んでいって火をつける。それもマッチでなければいけない。すでに100円ライターもありましたが、なぜか使用禁止。さらに、そのマッチの点火方法も細かく決められていて、軸を手前に引いて点火する、火種を本人に向けてはいけない。消火する際は吹き消してはいけない、軸の尻を叩いて自然消火させる……」
まさに銀座のホステスも顔負けである。
「いつもコーチや幹部のそばをウロウロしていて、タバコを吸う瞬間を見逃さないようにするのが大変でした。宴会の席でも何げなく後方に控えていなければならない。うっかり自分で火をつけられたりすると、あとでほかの幹部からビンタを食らいますから」(F氏)
そして“合宿の風呂”だが……。
「合宿に行くと、1年生は夕方の入浴時間は常に浴場内で待機していなければならないんです。コーチや幹部が入ってきたら、背中を流してあげるためです。ところが、彼らがいっぺんに来てくれないので、長時間、蒸し暑い浴室にいなければならない。練習で疲れ切っているだけに、もうフラフラでした」(F氏)
しかも、浴室では背中を流すだけではすまないこともあった。
「なにしろ精力があり余っている連中だけに、裸で背中を流しているとアチラが変化し始める人がいるんです。その場合、背中から手を回して、“処理”してあげることもありました」(F氏)
かつて日大ラグビー部の部員が“愛好者用”のビデオにアルバイトで出演していることが発覚し、コーチや監督が辞任する騒ぎがあった。また、例の危険タックルを直接指示していたとして辞任したアメフト部のコーチが、現役時代、やはり同種のビデオに出演していたことも話題になった。
「そんな幹部たちですが、よく本部の保体審事務局に呼び出され、『こんな成績じゃダメだ』と怒鳴りつけられていました。いま思えば彼らもつらかったと思います。それでも卒業までまっとうした保体審出身者は、その種の“試練”をともに乗り越えてきた連中なので、不思議な連帯感が生まれるんです。そんな学生時代の感覚のまま、日大の職員や運動部のコーチや監督になった連中が集まった組織、それが保体審です」
これでは危険タックルやパワハラ、果ては現実逃避の違法薬物などに走るのも当然かもしれない。
[3/4ページ]