ジャニーズ事務所が“性加害”で行う9月7日の記者会見 テレビ番組が示した8つのポイント

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(7)ファンへの説明は?

 放送作家兼芸能レポーターで「フォーリーブス」時代からジャニーズ事務所のタレントのファンだという山田美保子は次のように語っている。

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(山田美保子)
 私も気になったのがいろいろこの問題で報道や提言とか見てきたけど、(事務所側には)ファンのみなさんへの言及がほとんどないんですね。

 これまでファンのみなさんはお金も情熱も注いできて、それで今のジャニーズがあると私は思っている。これまでファンの人たちの要望ってほとんど事務所に届かなかった。これからはファンの方の要望も少しは届くようになってほしい。これ以上、ファンが悲しんだり心配したりする状況はなくなってほしいなと思います。
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 芸能レポーターというより、一ファンとしての偽らざる心境だろう。ファンに対する心のこもった言葉が新しく生まれ変わるジャニーズ事務所の新しい経営陣から発せられるのか。そこも注目ポイントだ。今回、各テレビ局が次々に表明したような「右へ倣え」の官僚答弁のようならファンは去っていくに違いない。

(8)被害者への補償はどうなる? テレビ局も任意に拠出金? 「当事者の会」の提言は採用されるのか

「ジャニーズ性加害問題当事者の会」(平本淳也代表)は9月4日、ジャニーズ事務所に対して新たな要請を行った。内容は「被害者救済措置制度」に関してジャニーズ事務所と「当事者の会」のそれぞれが推薦する専門家による委員会を設置してほしいというものだ。

 その委員会には「被害の事実と責任を究明 する部会」と「被害者との対話し補償や精神的ケアなどの救済措置を講じる部会」をつくることを求めている。運営のための基金を設立し、ジャニーズ事務所や藤島ジュリー社長など取締役のほか、任意でテレビ局などのメディアにも資金の拠出を求める提案になっている。「当事者の会」の平本代表は、委員会の活動期間について「少なくとも10年は被害者を救ってもらいたい」「一方的なものではなく、被害者の声を現場に生かしてもらいたい」とコメントしている。

 これは再発防止特別チームが提言した「外部専門家による被害者救済委員会の設置」をより具体化したかたちの提案だ。7日の記者会見でジャニーズ事務所が対策を発表する前に先手を打った。

「当事者の会」は今後、検察に刑事告発をしたり、国内外で民事訴訟を起こしたりすることも検討している。

「当事者の会」の平本淳也代表が出演したBS-TBS「報道1930」(8月30日)では、アメリカに旅行中にジャニー氏から性加害を受けた元ジュニアがいることから、「当事者の会」はアメリカで提訴することを法律家と相談しているという。アメリカには懲罰的損害賠償という考え方があり、性加害でも何百億円というケタ違いの賠償額になるケースがある。

 ただ「当事者の会」平本淳也代表は「(提言した)委員会を設置して、なるべくであれば一緒に運営していきたいという平和的解決」を望むことを示唆し、「ジャニーズ事務所が記者会見で提示する救済案を見て対応したい」としている。

 7日の記者会見では、こうした被害者救済の枠組み次第で今後、裁判というプロセスに進むのかどうかの分かれ目になっていくだろう。

 被害者側である「当事者の会」も救済プロセスに参加するかたちで救済のための委員会をつくることができるのかどうか。ジャニーズ事務所としても思いきった決断を迫られるところだろう。

 7日の記者会見ではこうしたポイントに注目してしっかりと見届けたい。

水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授

デイリー新潮編集部

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