今夏「なかったことにされている」ドラマ2選 ダメなポイントを徹底分析
アラフォー女と若い女の連帯、いわゆるシスターフッドを描くと聞いて真っ先に頭に浮かんだのは、ミランダ・ジュライの長編小説『最初の悪い男』(訳・岸本佐知子)だった。堅物で神経質だが、性的妄想は猛々しい43歳のシェリルと、若くて美人で巨乳だが不潔で粗暴、ずうずうしくて無敵の20歳のクリー。生傷絶えない肉弾戦や辛辣な言葉の応酬で始まったふたりの同居生活が、クリーの妊娠・出産でまったく別の方向へ動き出す。暴力と嫌悪からの相互理解、そして愛と連帯へ。奇麗事など1mmもない。女の体と心情のリアリティーが凝縮した物語で、幸福の多様性を教えてくれた名作だ。「意図せず妊娠した若い女をアラフォー女が支える」という設定が近かったから、比べちゃったわけよ。「18/40」と。深田恭子と福原遥がタッグを組んで女の絆って、この時点で「あ、奇麗事ですませるやつな」とわかってはいたのだけれど。
超高級タワマンの豪奢な部屋にひとり暮らししているアートスペシャリストの深キョンが、キュレーター志望の大学生だが、望まぬ妊娠をした18歳の福原の面倒を見てあげるわけですよ。
まんまと夢に近づくラッキーガール福原に、まんまと年下男(しかも元プロ野球選手の上杉柊平)からほれられる深キョン。THE奇麗事。女の連帯ではなく、「金持ちの道楽」みたいな話。シスターフッドではなくて、ノブレス・オブリージュみたいな話。いかにも日本的。いつまで女を夢見がちに描けば気が済むのか。
劇中に恋はあふれていて、第7話なんか、もう告白大会。深キョンだけでなく、鈴鹿央士も北香那も出口夏希も、誰も彼もが、猫も杓子も、告白・告白・告白。確かに「ふたりなら夢も恋も」という看板に偽りナシ。夢も恋も仕事も都合良く。痛みや恥ずかしさをさらけ出す妄想も、精神的な殴り合いもなければ、赤の他人の連帯に生々しさや説得力は出ないんだよなぁ。
この作品が話題にならないのは内容もさることながら、タイトルの読み方がわからず略しづらいから。私はヤンキー読みで「イッパチヨンゼロ」と呼んでいる。
もうひとつ。私の、というか、テレ朝の思惑が外れた作品を。三池崇史監督・生田斗真主演の「警部補ダイマジン」である。「こんなことをテレビで放送していいのか」という過激派宣伝の割に、ふたを開けてみればうんともすんとも静寂な世間。警の字もダの字も44(ヨンヨン)も一切浮上せず。
秘密結社が政府や警察の汚れ仕事を請け負って暗躍、という設定はとても興味深いのだが、ほら、今夏みんなの興味は「別班」にいっちゃったわけよ。裏部隊や裏組織といえば、願いをかなえるCODEでも、秘密結社44でもなく、別班。残念ながら別班の独り勝ち。かぶってしまった悲劇でもあり。政府と警察が腐敗しているのも、現実のほうがよっぽどえげつないしね。主人公が刑事で人殺しという点も、はたして過激かどうか。
凄惨かつ極悪非道な内容を欲していない私は、過激の意味を考え始めちゃって。波に乗り切れずに過ごす夏。