八冠目指す藤井七冠に黄信号 AIの攻め手を無視して「守り続けた」永瀬王座の新戦法
藤井が飲み物を注文する理由
ABEMAの解説では、藤井がタイトル戦の午後のおやつ(2日制では2日目の午後)で飲み物しか注文しない理由について話が及んだ。
渡辺九段によると「おやつは別室で食べるけど、3時ごろは佳境になっていて本当は対局室から出たくない」と棋士は考えるという。
コロナ禍以降、おやつの場合は別室に移動して食べることになったが、飲み物であれば対局室に残り、盤面を見ながら飲むことができる。
さらに、「対局室でおやつを食っていると、カメラに抜かれるんですよ。僕は気にしないけど、大抵の棋士は食べているところを大写しされたくないだろうし。でもせっかく、おいしいおやつを準備してくれているのに、食べられないのも残念」などと裏話を明かしてくれた。
負けない将棋の真骨頂
中盤は藤井がやや優位に進めていたが、終盤まで大きな差はなかった。攻めていた藤井も持ち駒不足に陥り、次第に永瀬が優位になってゆく。
両者、持ち時間の消費に大差はない。先に永瀬が時間を使い切って1分将棋に突入したが、数分後には藤井も1分将棋になった。
凌ぎに凌ぐうち、ABEMAのAIの評価値は永瀬が95%ほどに上がる。AIはある局面で、永瀬の最善手として攻め手を推奨していたが、永瀬は守り続けた。それで評価値が70%ほどに落ちたりもした。詰ませる自信はなかったのかもしれないが、受けの強い永瀬が持ち味でもある「負けない将棋」の真骨頂を見せていた。
次第に藤井は、敗けを悟った時に見せる、盤面に集中しなくなる様子がうかがえた。お茶を飲んだり、斜め上を向いたり、額に手をやったり、俯いたり……。
永瀬は藤井の攻めが続かないことを見極めて逆襲に転じた。150手目の王手「3五銀」を見て、藤井は「負けました」と投了した。
勝った永瀬は「後手番なので、どうついていくかという将棋だった。自信がない展開が続いたが先勝できてよかった」と話した。敗れた藤井は「どうバランスを取るかが難しい将棋だった。早くも厳しい状況になってしまったが。できるだけいい状態で(次局に)臨みたい」と決意を述べた。
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