絶対にだまされない「老人ホームの選び方」 見学するべき時間帯は? 何を基準にすればいい? プロが徹底解説
職員に悪意があるわけではないが…
老人ホームの介護スケジュールはこの1日3度の食事を軸に回っていると言っても過言ではありません。先ほど配膳ミスで騒ぎを起こすお年寄りがいるという話をしましたが、決まった時間に食事が始まらないと怒りだす入居者は意外に多い。従って、食事の時間は施設の秩序を維持するためにも定時に始まらなければならないのです。
ただ、このことが弊害を生む場合もあります。それが「モーニングケア」です。モーニングケアとはその言葉通りの意味で、自分で朝の支度ができない入居者の着替えや歯磨き、排泄介助を行う介護です。ところが、このモーニングケアを異様に早い時間から行っているホームもあるのです。
私が聞き取りをした限りでは、朝4時からモーニングケアを始めるという施設がありました。モーニングケアは順番に行われますから、5時ごろには身支度が完了し、誰もいない食堂で車いすのまま8時の食事開始まで待たされる入居者もいました。「なんてひどい」と思われる読者もいるかもしれませんが、職員も決して悪意があってやっているわけではないのです。
朝8時から朝食が始まる場合、それまでに全員の身支度を完了させなければなりません。従って、モーニングケアを必要とする入居者が多かったり、人手不足で夜勤の職員が少なかったりすると、朝食の何時間も前からモーニングケアを開始せざるを得なくなります。
老人ホームの良しあしとは?
このように、介護施設には殺人的に忙しい時間帯が一日に何度か存在します。逆に言えば「忙しい時の介護がどうなっているか」にその老人ホームの「地金」が出るともいえる。従って、もし可能であれば見学などは朝食や夕食時、または夜勤帯に行うことがホームの実態を理解するためには最も効果的でしょう。ちなみに、昼食時は職員の配置が比較的手厚く、昼食付見学会などを開催しているホームも多いです。その場合は、入居者と同じテーブルで食事することを希望してみるといいでしょう。このような見学を快く受け入れてくれるホームは介護のクオリティーにかなり自信があるのだと思います。仮に見学がかなわなくとも、食事時の体制がどうなっているかは質問してみてください。
ここまで説明してきたことからも分かると思いますが、老人ホームの運営は全体最適を最優先して行われるため、利用者個人の都合や嗜好は捨て置かれることも珍しくありません。この事実を無視して介護施設選びをしてしまうと、老人ホームでの生活は「我慢」の連続になってしまいます。
老人ホームの良しあしというのは、実はほぼこの点に集約されます。つまり自分にとって我慢することが多い老人ホームは良くないホームであり、我慢することが少なければ良いホームということになる。
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