絶対にだまされない「老人ホームの選び方」 見学するべき時間帯は? 何を基準にすればいい? プロが徹底解説

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

 認知症を受け入れて生きる。その上で忘れてはならないのが「老人ホーム」選びである。とはいえ何を基準に選べばよいのか、途方に暮れる読者も多いのではないか。老人ホームコンサルタントの小嶋勝利氏に聞いた“老人ホームをうば捨て山にしないための極意”とは。

 ***

 認知症と老人ホームは、切っても切れない関係にあります。

 そんなことは当たり前だろうと思われるかもしれませんが、老人ホームには、明らかに一般社会における割合以上の認知症患者が入居しているんです。

 日本では65歳以上の高齢者のうち、認知症患者は全体の2割弱といわれます。しかし、ある調査によれば、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなどのいわゆる「老人ホーム」に入居するお年寄りのうち、認知症患者が占める割合は実に8割を超えているというのです。

 この数字だけを見て、

「ボケて家族に見捨てられたのね」「自由を奪われてかわいそうに」

 などと悲観的に考える人もいるかもしれません。でもこのような見方は、半分当たっていますが、半分は外れています。

 もう少し丁寧に言えば、認知症になって右も左も分からなくなり、家族から「うば捨て山」同然に施設に入れられた高齢者は、確かに悲劇的です。ですが、認知症を発症する前やまだ軽度のうちに、きちっと準備をして、しかるべきタイミングで施設に入居した人は、必ずしも「かわいそうな存在」とは限りません。

在宅はアクティブ、施設は自由がない?

 かつて私の知り合いの介護職員が、こんな例え話をしていたことがありました。在宅と施設の認知症患者を比べて、それぞれの置かれた状況が「野生」と「動物園」くらい違って見えると言うのです。

 彼の意見はこうです。

 老人ホームでは24時間365日、万全の体制で入居者を管理しています。規則正しい生活のために朝になれば起床を促し、排泄、食事、お風呂、掃除はもちろん、適度な運動、場合によっては日光浴まで職員のコントロールのもと完璧に行われる。

 在宅の認知症患者は、こうはいきません。時間感覚がずれたり、食事を何度も取ってしまったり、さらに事故やトラブルに遭遇する可能性も低くはない。ただ、この職員いわく、在宅の認知症患者は自由でアクティブに見えるというのです。一方、施設に入居した認知症患者はまるで動物園の展示動物だと。けがをする可能性も外敵に狙われる恐れも少ない代わりに、自由がないと言うのです。

次ページ:施設の評価は個人の好み、置かれた状況に左右される

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[1/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。