2年前にスカウト密着宣言…特A「佐々木麟太郎」を狙う岡田阪神には“重大な課題”がある
進学か、社会人か、それとも
夏の甲子園大会も終わり、3年生の球児たちは“総仕上げのステージ”に進んでいる。ある者は「U-18ワールドカップ大会」のメンバーに選ばれ、ある者は鹿児島国体・高校野球硬式の部に出場する。高校通算140本塁打を放った佐々木麟太郎(花巻東)は、その国体に向けて練習を再開させたが、やはり気になるのは「卒業後の進路」だ。
【写真を見る】「佐々木クン、待ってるよ」という心境にあるのか。今シーズン600勝を達成した岡田監督
夏の甲子園大会・準々決勝に敗れた後、プロ志望届を出すのかどうかを質問され、
「まだ全く考えられていないですし、何も決めていません。岩手に戻ってからゆっくり決めたい」
と明言を避けた。プロ野球の世界に飛び込むのか、それとも、大学、社会人野球で鍛え直すのか――。
プロ入りを希望する高校球児は日本高野連に「プロ志望届」を出さなければならない。9月1日から開示された高野連のホームページには18人が記載されていたが(3日時点)、佐々木の名前はまだなかった。
志望届の締め切り日は10月12日。たとえ提出しないとしても、有名選手なので会見を開き、自らの口から進路について表明すると思われるが、取材を進めると、ドラフトを経てプロ入りするかもしれない、重要な手掛かりが見つかった。
2年前から阪神が密着マーク
<阪神が来年ドラ1候補の花巻東・佐々木麟太郎を2年間密着マークへ>
日刊スポーツが2022年1月6日に報じた高校野球ニュースの見出しである。当時の佐々木は、まだ高校1年生。前年秋の神宮大会で特大のホームランを放ち、そのケタ外れなパワーと打球速度で12球団のスカウトたちを釘付けにしていた。前年4月の花巻高校入学から8ヶ月で50本塁打に到達しており、「スーパー1年生」とも呼ばれていた。
同記事は、さらにこう伝えていた。
<球団関係者は「そりゃあモノはいいよ。順調にいけば村上(ヤクルト)みたいになってくれる。それを想像させるような選手」と、昨季セ・リーグMVPを獲得したスラッガーに匹敵する素材と絶賛。「1年であのスイングにとらえ方。清宮(日本ハム)よりも打撃が柔らかい」と評価する。同じ左の大砲清宮は早実で高校111発を放ったが、1年時は22本だった。佐々木は今後2年間で、どれだけ本数を伸ばすのか。来年のドラフトまで、阪神スカウト陣が密着マークする。
(略)球団関係者は、出場確実な春のセンバツでの姿を楽しみにしている。甲子園デビューでいったいどこまで飛ばすのか。地元球団の地の利を生かし、多くのスカウト陣、関係者の目でしっかりとクロスチェックを行う>
さらに、記事の中では、
<23年ドラフトの超目玉選手で1位指名すれば他球団と競合必至だ。だが、阪神が獲得できれば、ミスター・タイガース掛布のような左の高卒スラッガーが誕生し、佐藤輝と並べば破壊力満点打線が形成できそう。まずはセンバツで…>
と、阪神の近未来像まで伝えられていた。
スポーツメディアが報じるドラフト情報として、1位指名選手を予想することは多い。もちろん、球団関係者のコメントや当該選手の学校など、周辺取材に基づいて書かれているが、予想が外れることも少なくない。同様に、ドラフト会議直前で1位指名選手が変更されることもある。この「阪神1位」報道もその類かもしれないが、ライバル球団のスタッフはこう言う。
「ドラフト会議直前で1位指名の選手名を公表することもあります。でも、公表すると決まる前に指名候補の名前が漏れるのは大失態です。どの球団もそうですが、トップシークレットですよ。それなのに『密着する』とか言うのもおかしい。阪神サンはあえて情報を流し、他球団の佐々木クンに対する出方を窺ったのでは。しかも2年も先の話をするのも不自然です」
確かに、3年生ならともかく、1年生をドラ1として公表するのは異例である。こんな意見もあった。
「どの球団もやっていますが、有望中学生のリストを作り、どこの高校に進んだのかをチェックします。進学先の地区担当スカウトがその調査資料を引き継ぐんです。だから、どの球団も1位候補になりそうな1年生には地区担当スカウトが張り付いています」(在京球団スタッフ)
ドラフト1位選手は入札・抽選制で行われる。他球団と入札した選手が重複し、抽選に外れた場合、再入札となり、それで指名が決まった選手は「外れ1位」と呼ばれている。
「残念ながら、最初に入札した選手と外れ1位の実力差があります。だから、どの球団も指名の重複を嫌います。先に公表することで、ほかの球団に手を引かせたい思惑もあったのでしょう」(前出・同)
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