【男子バスケ五輪出場】トム・ホーバス監督が語った「私があえて日本語で指導する」理由
少し褒める
準決勝のフランス戦では、オコエ桃仁花(もにか)があまり良くなかったので、結構注意しました。そうしたら彼女、試合中に泣きそうになってしまって……。「ああ! 言い過ぎました!」と私も反省しました。次の日の練習の前に、二人で5分くらい話してフォローアップしました。「ちょっとストレートに言い過ぎました。桃仁花、自信下げないで、しっかり自分のロール(役割)をやろうよ。視野狭いの良くないから、チームのこと考えて」と。それでずいぶん明るくなりましたし、決勝のアメリカ戦でのプレーも良くなりました。
言葉だけでは100%のコミュニケーションは取れないので、選手たちのボディランゲージや表情は良く見るようにしています。選手のエナジーが下がると、目が下を向くのですぐに分かります。いつも「Head Down しない(視線を下げない)! 目よく見て」と言っています。ちなみに私は、相手のリアクションやボディランゲージが見えないので、電話は苦手です。
教えるのが女子だから、というのはあまり考えていませんが、女子の方が間違いなくメンタルは強いですね。「負けたくない!」と泣くこともありますが、それもメンタルが強いからこそではないでしょうか。
女子を教える上で気をつけているのは、少し褒めることです。少し褒めると、厳しく怒っているだけの時は平然としている選手が泣くこともあります。それだけ、褒められてきていないのかなと思います。みんなすごく真面目なので、足りないことばかり指摘すると気持ちが落ちてしまうのですが、少し褒めることで、エナジーが上がる気がします。多分、選手本人たちよりも私の方が選手の力を信じています。少し褒めることで、みんなの自信を引っ張り上げることを意識しています。
〈五輪の決勝の直後、選手たちに教えたいことが「いっぱいある」と話したホーバス監督。今後の去就についてはどう考えているのか。〉
今は家族が住むアメリカのカリフォルニア州サンディエゴに1年半ぶりに帰ってきていて、リラックスした時間を過ごしています。(本誌の取材を受けた9月14日の時点では)今後のことはまだ考え中です。私の意思だけでは決められないので、話し合っているところです。しばらくは練習もないし、代表のみんなと会うことができないと思うと、寂しい気持ちもありますね。