中国への海産物禁輸で日本にメリットが 「高級鮮魚が日本人の手にも届くように」

国際 中国

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「自分で自分の首を絞めている」

 生魚を新鮮な状態で保存して運び加工するという技術においても、日本が世界でズバ抜けているという。そうした技術は一朝一夕ではまねできない。もともと中国人は自国産の鮮魚を信頼していないそうだ。

「禁輸措置が続いても、中国国内のシェアを他国に奪われる心配をする日本の業者はいません。日本の魚は他国と差別化できていますから、むしろ中国では以前のようなクオリティーの生魚が食べられなくなって困るんじゃないですかね。自分で自分の首を絞めているようなものだと思います。もちろん中国相手に商売していた日本の業者などは影響を受けますから、消費者の皆さんには風評被害に惑わされず、三陸や常磐モノを買ってもらえれば生産者も助かります」(同)

日本人が入手しやすくなるメリット

 さらにはこんな“恩恵”もあるとして、こう続ける。

「ここ数年、海外では空前の日本食ブームで、日本の高級鮮魚は主に中国などのバイヤーが高値で買い付けてしまい市場価格が高騰していました。ウニなら1箱10万~20万円といった値段がついていたので、とても日本の仲卸は手を出せない。今回の禁輸措置で中国の異常な買い付けがなくなり、皮肉なことですが日本人も入手しやすくなる。そんなメリットが生まれるかもしれません」

 実際、海洋放出後初めての週末でも、豊洲や築地は新鮮な魚を求める人々で賑わっていた。中国が仕掛けた風評被害を助長させる情報戦は、早くも綻(ほころ)びを見せているのではないか。

 水産物の流通や需給に詳しい鹿児島大学水産学部の佐野雅昭教授が言う。

「中国の禁輸措置には科学的な根拠がなく市場を歪める政治的圧力であることが明らかです。日本が妥協し譲歩する必要はありません。理不尽な相手には買ってもらわなくても結構という姿勢でよいと考えます。ただし、このことで日本の漁業が弱体化しないよう十分な補償や支援を行うと共に、官民一体となって国内での加工や消費を拡大し、加えて中国に代わる海外市場の新規開拓に注力すべきです」

 風評被害をあおる中国との決別をはかる好機なのだ。

週刊新潮 2023年9月7日号掲載

特集「原発『処理水』中国『偽情報』との攻防」より

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