中国への海産物禁輸で日本にメリットが 「高級鮮魚が日本人の手にも届くように」
中国政府は、処理水の海洋放出が始まった8月24日、日本の海産物輸入を全面的に禁止するとぶち上げた。翌日には中国の食品業界に対しても、日本の海産物の調理や加工、販売を禁じたのだ。
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中国に精通するジャーナリストの高口康太氏に聞くと、
「今回、日本の外務省や農水省、それに東京電力も中国語で専用のウェブサイトを設けて処理水について説明を行うなどして、風評被害を防ぐための情報発信を積極的に行っています。ところが、中国ではそうした情報をSNSなどでシェアするとすぐに消されてしまう。つまりは“情報の禁輸”までもが行われてしまっているのが現状なのです」
放出後の26日、日本政府は福島沖の魚を検査して放射性物質の有無を分析したが、29日現在、安全基準の値を超えた例は報告されていない。
にもかかわらず、中国では連日ニュースで“日本が核汚染水を海に垂れ流している”と盛んに取り上げ、偽情報を信じた人々が汚染される前にとスーパーで塩を大量に買い込み、日本へ嫌がらせの電話をする騒ぎとなっているわけだ。
「中国人のバイヤーも来ている」
そんな彼らにしてみれば、輸出先としては中国が一番のお得意様だという日本の水産業界が、格好のターゲットだと思ったに違いない。
昨年度、我が国の海産物の輸出額のうち中国が占める割合は4割超で、約1600億円に上る。1位はホタテ、2位はナマコで3位がマグロ・カツオ類と続くが、それらが中国へ輸出できないとなれば、日本の水産業に与える影響が気になるところである。
「ここ数日で、中国に輸出ができなくなってウニやマグロ、タイ、ヒラメといった高級なモノを中心に、在庫がダブついてきたという話は聞きます」
と明かすのは、東京魚市場卸協同組合の担当者。
「とはいえ、日本の海産物は一大ブランドですから、豊洲市場を訪れるアメリカや東南アジア、南米などのバイヤーたちは、“日本の水産物を信頼している”“処理水は気にしていない”と言ってくれます。実は中国人のバイヤーも来ていて、中国本土や香港、マカオには高品質な日本の水産物を求める人が一定数おり、需要も多いことが分かります」
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