結婚直後に「妻が自分を選んだ理由」を知り困惑… 64歳夫が振り回された“彼女の家族問題”

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「長くつきあおうとは思っていなかった」

 逃げ道を用意したのに、彼女は逃げなかった。もちろん、彼女もそれだけ輝司さんのことが好きだったからだ。

「聞けば夫とはあまりうまくいってないみたいだし、だったらオレとつきあおうよ、大事にするからと言ったら、『あなたはどこか軽くて信用できない』と笑っていました。でも僕だって、その後も長くつきあおうとは思っていなかった。ふたりとも家庭もちだし、どちらかが飽きたら終わり、バレたら終わりの関係だと割り切ったつもりだった」

 それなのにふたりは離れられなくなった。会うたび、彼女は「感じ方が深くなっていく」とつぶやいた。それは輝司さんにもわかっていた。「昼間、ときどき、あなたが入っているような錯覚に陥って頭がぼうっとするのよ」と言われたときは、女性の感じ方はそこまで深いのかと驚いたという。

「僕はまったく女性の心と体を知らなかったんだなと思いました。美枝子とは第二子の長男が産まれてから、ほとんどしてなかったし。外でまったく何もなかったとは言わないけど、その場のノリというか一夜の関係しかなかったから」

 当時、輝司さんは39歳、冬美さんは35歳だった。

後編【「心が張り裂けそうでしたが、表立って泣くこともできず…」 妻と共に「不倫相手の葬儀」に出た64歳夫の罪意識】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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