結婚直後に「妻が自分を選んだ理由」を知り困惑… 64歳夫が振り回された“彼女の家族問題”
美枝子さんの「家族問題」を乗り越えて
美枝子さんは結婚前から勤めている会社で仕事を続けていた。父とも輝司さんともまったく無縁の職場だ。夫のグループ会社でのイベントにも彼女は出席しない。父と会う可能性がある場所には決して行こうとしなかった。
「結婚後、うちの父が創業40年だかのパーティがあるから夫婦同伴でと言ってきましたが、僕は美枝子は行かないと伝えました。僕も美枝子の父親とはほとんど話をしません。本当はみんな仲良くできればいいけど、そうもいかない。僕が守るべきは美枝子だけだと思っていました」
最初の「親族間の難関」を、彼は妻とふたりで乗り越えた。「守るべきは妻」という立場をはっきりさせたことで、美枝子さんとの関係も盤石になったと感じた。その後、ふたりは2人の子に恵まれた。それでも美枝子さんは仕事を辞める気はなさそうだった。
「経営者といいながら、僕の会社はそれほど儲かっているわけじゃないんです。そもそも儲け第一とも思ってない」
変わった経営者だと言われていますと彼は笑った。すがすがしいような笑顔だった。
偶然の出会い
妻の美枝子さんが仕事で出会った冬美さんと仲良くなったのは、ちょうど第一子の長女が小学校に入ったころだった。そしてその直後、輝司さんは通い始めたスポーツジムで冬美さんと会った。
「会ったというより出会い頭にぶつかったんですよ(笑)。僕はこれから運動を、彼女はジムから帰るところでエレベーターが開くなり彼女が飛び込んできた……。ちょうど僕は考えごとをしていて無防備だったんです。ぶつかるなりひっくり返ってしまって。彼女が悲鳴を上げたので、何かあったのではとジムのスタッフが数人、飛んできました」
文字通り激しい出会いだった。そして彼は「今日は帰る」とジムをあとにした。冬美さんは送っていくと言い張り、タクシーに同乗してくれた。そして家で出迎えた美枝子さんを見て、あなたの夫だったのね、とわかったわけだ。
「頭を打ったわけでもないので病院には行きませんでしたが、冬美がすごく心配してくれて。美枝子に黙って、彼女を食事に誘ったのが最初でした。そこからまあ、僕がぐいぐいと押しまして」
冬美さんも結婚しており、ひとり息子は輝司さんの長女と同い年。ちょうど小学校に入ったばかりだった。学校は違っても、同じ年頃の子をもつ親同士。冬美さんは「夫は子育てに熱心ではない」と、さまざまな相談を彼にもちかけた。
「彼女は親同士ということで、僕をあきらめさせようとしたのかもしれない。でも僕は彼女の話を聞けば聞くほど、彼女に惚れ込んでしまった。 何度か会っているうちに、こんなに好きにさせたのだから、責任をとってほしいと冗談で言ったんです。そうしたら彼女が黙り込んで、『私に責任がとれる?』と」
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