踏切トラブルで「ことでん」社長が辞任 交通再編の旗手でも苦境…ローカル線に未来はあるか
高松琴平電気鉄道(ことでん)が8月21日に記者会見を開き、真鍋康正社長が辞意を表明した。
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ことでんでは、近年に踏切の不作動が頻発。6月には四国運輸局から業務改善命令が出されていたが、その後の8月19日にも同様のトラブルが起きたことから社長の辞意表明につながった。
ことでんは、香川県高松市を中心に3路線を有する。総延長は約60・0キロメートルにも及び、その規模は大手私鉄の阪神電鉄や相模鉄道よりも長い。しかし、利用者数は比べるまでもなく少ない。
ことでんは2001年に民事再生法を申請した。 新社長の下で経営再建に取り組み、2006年に再生計画が終了。経営破綻以前のことでんは駅員や運転士の接客マナーが悪く、市民からも信頼されていない公共交通機関になっていた。そのため、経営が破綻した際には「鉄道はいるが、琴電(ことでん)はいらない」と言われる始末だった。
経営再建は市民からの信頼を取り戻すサービス改善から始めることになり、親しみを覚えてもらう目的で2002年にイルカのマスコットキャラクター「ことちゃん」が誕生している。ことちゃんがイルカのキャラクターになったのは、「ことでんはいるか? いらないか?」との自問自答が由来になっている。
そんな自虐的とも受け取れる経緯で誕生した「ことちゃん」は、フリーダムな言動がSNSで注目される。これが少しずつことでんのイメージアップへとつながっていった。
真鍋社長は2014年に先代から経営を引き継いだわけだが、経営再建を果たしたといってもことでんの経営は決して楽観視できる状態になかった。
鉄道ファンには人気が高くても…
香川県に限らず、地方都市はマイカーに依存が高い。それは香川県特有の話ではなく、共通した課題だが、ことでんは地方鉄道の中でも突出して車両や駅、設備の老朽化が著しい。設備の更新には当然ながら費用がかかる。路線の規模が大きければ、設備も比例して増える。そうした設備の更新は経営再建中には手が回っていなかった。
ことでんの古い車両は、鉄道ファンに人気が高かった。しかし、沿線住民にとって古い車両は快適性に劣る車両でしかない。日常的に利用するなら、快適な最新車両の方がいいに決まっている。
それは鉄道会社の経営陣も痛いほどわかっている。それでも中古車両を購入せざるを得ないのは、鉄道車両が安くても一両で数億円もする高価なモノだからだ。車両を新製することはおろか、中古車両だって簡単に購入できない。
ことでんでも、大手私鉄の中古車両を購入し、それをメンテナンスしながら使っている。そうして経費を浮かし、それで経営を成り立たせている。ところが、いくら中古車両で経費を縮減させても、沿線人口の減少による減収は鉄道会社の力だけではどうにもならない。
沿線人口が増加しなければ、利用者が増えるはずがない。日本全体が人口減少局面にある現在、各地の鉄道会社がジリ貧になることは誰の目にも明らかだった。それでも私鉄は民間企業ゆえに利益を追求しなければならない。利益を出すには、利用者を増やすことが求められる。
そんな無理ゲーと思える難題に対して、ことでんは地元の高松市と連携することで打開策を見出そうとした。ことでんと高松市が取り組んだ経営の打開策、それが公共交通の再編だった。
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