探偵業者に陰謀論の調査を依頼する人が増加中 警察は探偵に注意喚起を促すも、安易に断れないケースも

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罵詈雑言の辛さ

 しかし、現場の状況はもっと複雑だ。先の探偵は「探偵が被害に遭うこともありますよ」と言う。

 彼の知り合いの探偵のところに相談者がやって来た。「私は今上天皇がサイボーグであるという情報を握っている。先週から怪しい男たちに自宅が見張られており、自分の命に危険が及ぶかもしれない。ボディーガードを依頼したい。このような相談は警察では相手にしてもらえないだろうから、あなたに頼みたい」という内容だった。

 探偵が断ると、「なぜ断るのですか? あなたは私が殺されてもいいのですか?」と納得してくれない。いくら断っても何度も依頼してくる。その度に依頼者は「人でなし! 見殺しにする気か!?」「私が死んだらあなたのせいだ!」「探偵なんて辞めてしまえ!」と罵詈雑言を浴びせられたという。

 この手の依頼を引き受けると、自分が準詐欺罪で逮捕されかねない。必死になって断り続けるしかなかったが、「どうしてこんな目に遭わなければならないのだ」と思ったそうである。こうした依頼者の行動も強要罪とまでは言えないにしても、何らかの侮蔑罪やハラスメント行為に該当するはずだ。

 ヤバい依頼者をやり過ごすため、「あえて引き受けて様子を見ることにした」という探偵もいるのではないだろうか。その場合、調査を引き受けた探偵の誰もが、悪徳業者とは言えないだろう。

業界の意外な反応

 探偵を擁護しすぎだと思う方がいるかもしれないが、実は依頼者の中には事理弁識能力を逆手に取る人もいる。

 精神的なトラブルは何も抱えていないため、契約を交わした時や調査の時は何の問題も起きない。ところが、調査結果に満足ができない時、急に精神的なトラブルを装い、事理弁識能力に問題がある人物と契約した違法契約だと探偵に言いつのり、被害弁済を求めてくるケースがあるという。

 探偵というのもなかなか因果な商売だが、とにもかくにも最近の陰謀論ブームのおかけで、探偵も警察もめまぐるしい日々を過ごすようになったのは確かなようだ。

藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『菱の血判 山口組に隠された最大禁忌』(サイゾー)、『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』(以上、太田出版)など。

デイリー新潮編集部

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