探偵業者に陰謀論の調査を依頼する人が増加中 警察は探偵に注意喚起を促すも、安易に断れないケースも
新しいタイプの悪徳探偵
探偵は言う。「たとえ陰謀論を信じ、その真相を確かめたいと思っても、普通は探偵に依頼したりはしないですよね。自分でとことん資料を調べ、真相を追究しようとするのではないでしょうか」
事理弁識能力に問題があり、探偵の元を訪れるような人々は、まず家族や友人に陰謀論を展開する。そのうち、企業が顧客対応のため開設しているフリーダイヤルのコールセンターに電話をかけ、何時間でも話をするようになる。
それに飽きると探偵を訪れ、陰謀論を延々と展開する。探偵の仕事は浮気調査や人捜しが多い。依頼者の話をじっくり聞かないと判断が付かないケースは珍しくない。そのため最後まで相手の話を聞く姿勢ができあがっている。
とはいえ、陰謀論に“ラストシーン”は存在しない。どれだけ陰謀論に真摯に向き合っても、「これでおしまい」という場面はやってこないのだ。延々と続く終わりのない話を聞きながら、探偵は依頼者の状態について判断を下す。そして結局は、トラブルや法令違反を回避するため依頼を断るのが一般的なのだ。
ところが最近では、こうした依頼に応じる探偵がいるという。彼らの目的は「答えが出ない依頼を引き受けることで、延々と調査料を払わせる」ことにある。
警察も注意喚起
2022年11月、「電磁波攻撃の被害を解決してほしい」という依頼を引き受けた東京・渋谷区内の調査会社の経営者と元従業員が、準詐欺罪の疑いで警視庁に逮捕されたことは新聞なども報じている。
陰謀論について語り合える相手を失った末、探偵の元を訪れたような人々は、自分の話を聞いてもらえないという寂しさを感じている。そこに付け込んで調査料を支払わせることは、それほど難しいことではない。「結果を出すためには追加費用が必要です」と持ちかければ、かなりの金を搾り取ることが可能だ。探偵業者は法律違反と分かっていても、カネの魔力に目がくらんでしまう。
探偵は公安委員会が定める探偵業法に従いながら、各都道府県の警察による検査や指導を定期的に受けている。元警察官や自衛隊情報部出身者の探偵も多い。
これ以上の被害者を増やさないためにも、警察も近ごろは「陰謀論について相談が持ち込まれたら警察に連絡すること」などと注意喚起を徹底している。実際、「高額な調査費用を要求された」という警察への相談も多く、捜査中の案件も増加しているようだ。
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