【VIVANT・考察】乃木がバルカに向かう飛行機内で、野崎に向かって言った故事の重要な意味
TBS「日曜劇場 VIVANT」(日曜午後9時)に、相変わらず夏ドラマの話題が集中している。スタッフ側は「考察必至」と謳っているが、確かに分からないことだらけ。考え込んでしまう。それでも面白いのは脚本がしっかりしているから。1話当たり約1億円の制作費が生かされている。
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脚本にも金がかけられている
「VIVANT」が好評な理由は、堺雅人(49)や阿部寛(59)、役所広司(67)ら豪華キャストを揃えたことや、モンゴルでの長期ロケが実現したことだけではない。費用は嵩むが、実写に拘り、CGをほとんど使っていないことも挙げられる。前回7話で堺と二階堂ふみ(28)が抱擁した美しい桜並木も本物だった。
カット(映像が切り替わるまでの1場面)数も多い。通常の1時間ドラマは正味約45分で350~400カット程度だが、「VIVANT」は同じ約45分で500弱~600弱カット。通常より2~3割増しで、一般的な映画に匹敵する。だから、東京編であろうが、映像にテンポと躍動感がある。その分、金と時間がかかっている。
ドラマのカギを握る脚本にも金を惜しんでいない。福澤克雄監督(59)が書いた原作を脚本化しているのは4人。まず「半沢直樹」(2013年、2020年)で福澤氏と組んだ八津弘幸氏。全話を担当している。
さらに李正美氏、山本奈奈、宮本勇人氏の3人が交代で八津氏と組んでいる。つまり、毎話2人体制。だから謎が数珠つなぎで複雑な物語が紡げたのだろう。
李氏は福澤氏が監督した「新参者」シリーズの映画「祈りの幕が下りる時」(2018年)などを担当した。山本氏は「ドラゴン桜」(2021年)を書き、やはり福澤氏と組んだ。宮本氏は「DCU」(2022年)に脚本協力で参加している。
2~5人程度の脚本家が単発形式のドラマを交代で1話ずつ書くのは珍しくないが、毎話2人体制はまずない。1クール(3カ月)の連続ドラマをすべて1人が書くケースすら多いから、なんとも贅沢な布陣である。
乃木に撃たれた別班の4人は生きている?
4人が書く物語は想定外の連続だが、7話は特に謎だらけだった。別班の乃木憂助(堺)は仲間の高田明敏(市川笑三郎・53)、和田貢(平山祐介・52)、廣瀬瑞稀(珠城りょう・34)、熊谷一輝(西山潤・25)の4人を射殺したのか? そうとは思えないのである。
乃木ら計6人の別班はロシアのテロ組織・ヴォスタニアに成りすまし、やはりテロ組織のテントと合流した。場所はロシア寄りのバルカ共和国内。テントを率いていたのは大幹部のノコル(二宮和也・40)である。
この場で乃木がノコルから銃を奪い、それを彼に突き付けた。これによって身動きの取れなくなったテントのメンバーを、ほかの別班の5人が取り押さえようとしたが、乃木に撃たれてしまう。黒須駿(松坂桃李・34)は負傷で済んだものの、残り4人は死んだように見えた。
もっとも、テントは4人の生死を確認していない。銃撃から間もなく現場に警視庁公安部の野崎守(阿部)とバルカ警察が駆けつけたため、乃木と黒崎を連れて逃走した。野崎たちも4人の脈を調べないまま7話は終わった。乃木は急所を外して撃ち、野崎に前もって救命措置を頼んでいたのでないか。
救命措置の依頼は、野崎が現場に向かう直前に見たスマホのメールに書かれていたのだろう。このメールには現場の詳しい場所も記されていたはず。そうでないと、野崎は現場に辿り着けない。野崎はこのメールを見た時、顔に驚きの色を浮かべた。場所の説明を見ただけで顔色は変わらない。仲間を撃つ計画が書かれていたからだろう。
そもそも野崎が現場の近くまで来られたのも、乃木が誘導したから。乃木が自分に付けられていた追尾用の発信機のスイッチをオンにした。乃木は野崎が現場に来ることを望んでいたわけで、その目的は4人の救命措置と考えるのが自然だろう。
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