「富士山大噴火!」「奇形カエル出現」「日本製キャンディー押収」… 「処理水放出」で広がる中国SNS“トンデモ投稿”の知られざる裏側
ネット検閲と“祭り気分”
中国事情に詳しいジャーナリストの高口康太氏が指摘する。
「中国のSNSの現状は、日本から見ると“大炎上”しているように映りますが、ショート投稿でバズったのに味をシメた愉快犯らによるデマ投稿もかなりの数にのぼると見られます。実際、12年の尖閣諸島問題の時と比べると、“日本憎し”の感情がストレートに伝わってくる投稿は思いのほか多くないとの印象です。“憂さ晴らしに祭りに参加する”といった感覚で盛り上がっている部分が少なくない一方で、現在の状況を中国政府が黙認している部分があるのは確か。この間、日本政府の主張に沿う“科学的に見ると処理水が危険とはいえない”との冷静な指摘を中国の科学インフルエンサーや元原子力部門の関係者らが投稿したケースもありますが、すぐに消されています」
中国外務省報道官は処理水の海洋放出を受け、「日本は全世界に核汚染のリスクを転嫁した」などと批判してきた手前、都合の悪い情報は見つけ次第、削除。しかし内容がどれだけデタラメであろうと“日本批判”の投稿は野放しにしているわけだ。
「現状、習近平政権によるネット検閲と世論コントロールはうまくいっているようですが、このまま放置すれば“日本産だけじゃなく、韓国産や中国近海で獲れた魚介類も危険では?”といった方向に中国国民の不安が拡大しかねない。そうなると中国経済に悪影響を与える可能性も出てくるため、習政権も近く“落としどころ”を考える必要に迫られるかもしれません。ここまで強硬な批判を繰り返していると矛の収めようがないようにも見えますが、いざとなれば、どうにでもなる。実際、ゼロコロナ政策の解除時も“コロナが弱毒化した”といった非科学的理屈でもって強引に収束させています」
厄介な「隣国」の都合に振り回されず、日本政府には毅然とした対応が求められる。