「強烈な排他性がある」「“内輪ノリ”と“群れる習性”が」 慶應OBらがひもとく、「慶應騒動」が巻き起こった本当の理由

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強烈な排他性

 経済評論家の山崎元氏は三田会の「効力」についてこう解説する。

「私が以前勤務していた三菱商事にも社内に三田会がありました。会合には、役員から新入社員までが参加するので、若手社員にとっては上層部に顔を売る良い機会。それが人事に影響する場合もあります。三菱UFJ銀行の三田会には千人を超える社員が属しており、三田会のつながりが仕事と出世に役立つ可能性があります」

 そうなれば他大学出身の社員からやっかむ声が上がるのは当然である。

 先の島田氏によると、

「企業の中で三田会の集まりがあっても、目立たないようにこっそりやっています。結束力の強さゆえの排他性。普段はそれが露呈することはありません。今回の甲子園を巡る騒動は、それが目立ってしまった非常に珍しい例です。それで反発を呼んでしまった側面はあると思います」

 過去には強烈な「排他性」が“事件”につながった例もある。01年、AV監督の村西とおる氏と元AV女優の乃木真梨子さん夫妻の息子が慶應幼稚舎の試験に合格して入学すると、幼稚舎OBの父母たちが猛反発。その後、幼稚舎トップである舎長が突然退任したのは、この一件が原因なのではないかとささやかれた。

「幼稚舎から普通部、そして内部では塾高と呼ばれる慶應義塾高校を経て大学に行くのが本来の慶應ボーイで本家本流。数ある三田会の中でも幼稚舎三田会は結束力が極めて強く、別格の存在です」(慶應OB)

 現在は俳優の堺雅人・菅野美穂夫妻や西島秀俊夫妻の子どもが通っているとされる慶應幼稚舎。もちろん、代々幼稚舎に子どもを入れる企業経営者一族も少なくない。

「ブルジョワ的雰囲気になじめなかった」

 慶應高校から東大に進んだ秀明学園理事長、秀明大学学長の川島幸希氏が言う。

「幼稚舎から上がってくる人は家柄が良くてお金にも余裕があり、卒業後は何年か別の企業に勤め、ゆくゆくは家業を継ぐといった人が多かったですね。ガツガツギラギラした人は基本的にいません。政治家の子も多く、私の時だと一つ下に石原良純氏、二つ下に河野太郎氏がいました」

 慶應普通部から慶應高校、その後早稲田大学の政治経済学部に進んだ放送大学教授の原武史氏は、

「慶應普通部に進学した時、団地に住んでいたのはクラスで私だけ。世田谷区や大田区、目黒区、渋谷区などの名だたる住宅地に住んでいる生徒が多く、階層のギャップを感じました」

 と、述懐する。

「だからといってイジメはなく、私は当時から鉄道の研究をしていたので、一人のエキスパートとして認める空気がありました。ただ、それでも慶應のブルジョワ的雰囲気になじむことはできませんでした」

 そんな原氏も、今回の甲子園優勝で自身の愛校心に気付かされたという。

「あの応援は全体主義的に見えるかもしれませんが、慶應の文化は全く違う。規律や校則で生徒を縛ることがなく、自由な校風です。ただし、あの応援の仕方は大学の早慶戦と全く同じで、違和感がありました。甲子園は神宮球場ではないのですから」(同)

 少なくともあの応援の中に、福澤諭吉が大切にした「品位」は見いだせまい。

週刊新潮 2023年9月7日号掲載

特集「甲子園『慶應優勝』への違和感の正体」より

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