「強烈な排他性がある」「“内輪ノリ”と“群れる習性”が」 慶應OBらがひもとく、「慶應騒動」が巻き起こった本当の理由
「福澤イズム」
三田会の強さの源泉には、慶應義塾の創設者である福澤諭吉の思想もあるという。
「福澤諭吉が残した教育理念のうち、三田会との関係で何よりも重要なのが『社中協力』の考え方です。慶應義塾で学んだことのある人間の集合体が社中。社中協力とは、同じ社中に属する人は親睦を深め、人間関係のネットワークを広げていかなければならない、という考え方。三田会のネットワークが広がっているのも、この理念が生きているからです」(同)
慶應では「先生」は福澤だけで、たとえ教授でも学内では「君」付けで扱われる、との伝説めいた逸話もある。このエピソードに象徴されるように、「福澤イズム」は現役の塾生から卒業生まで、深く浸透しているのだ。
「経済界に強いというカルチャーも三田会を強くしている要因でしょう。三田会のネットワークはさまざまな場面で役に立ちます。例えば転職を考えた時、普通の人は転職サイトなどに登録しますが、慶應の人は三田会のネットワークを利用して転職する人が多いと聞きます」(同)
就職、転職に有利なネットワーク
慶應の評議員会には、サントリーホールディングス会長の佐治信忠氏や、議長に三井不動産会長の岩沙弘道氏など、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。さらに企業別や卒業年度別などの三田会が複層的に広がっているのだから、就職や転職に有利なのは疑う余地がない。一方、そうしたネットワークを利用しようと考えなくても、結果的に慶應の縁が人生を変える、という場合もある。
慶應大学法学部を卒(お)えてアイシン精機に入社した後、リクルートに移り、現在は危機管理コンサルタントの田中辰巳氏が振り返る。
「私は体育会柔道部出身なのですが、アイシン精機に勤めていた時、取引先だったリクルートの名古屋支社長が慶應の先輩で、体育会バレー部の出身でした。バレー部は合宿所がなく、柔道部の合宿所に間借りしていたので、柔道部とバレー部は親しかった。それで、とても目をかけてもらいました。そしてその縁で私はリクルートに入社することになったのです」
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