「強烈な排他性がある」「“内輪ノリ”と“群れる習性”が」 慶應OBらがひもとく、「慶應騒動」が巻き起こった本当の理由
慶應優勝への違和感
悲願を達成するために甲子園の地に立った慶應ナインには、勝ち上がるにつれ、さまざまな方向からスポットライトが当てられることになった。その一つが、森林監督が上田前監督から受け継いだ、「エンジョイ・ベースボール」だ。髪形自由、練習も選手の自主性に任せるなど、旧来型のスパルタ方式とは無縁の指導法で、その申し子のような存在として注目が集まったのが先の丸田選手らである。また、あの清原和博氏(56)の息子の清原勝児選手(18)がベンチメンバーに名を連ねていたこともあり、「慶應フィーバー」のような状況となるのは当然の成り行きだったといえよう。
「テレビ各局のほとんどのワイドショーは慶應推し、特に丸田選手推しで番組を作っていましたね。フジテレビは『めざましテレビ』や『めざまし8』などでしつこいくらい丸田選手のことを取り上げていました」(テレビ局関係者)
しかしこれだけ盛り上がったにもかかわらず、慶應の優勝について「モヤモヤしたものを感じる」と違和感を表明する人が一定数存在したのも事実である。その背景に、先に触れた「大応援団」の存在があることは間違いないだろう。慶應が大量得点した5回、丸田選手の飛球の際に交錯した仙台育英の選手は、「声は出していたんですけど相手の応援で全く聞こえませんでした」と後に語った。
慶應名誉教授は「申し訳ない」
「大学野球的な応援で、神宮のノリをそのまま甲子園に持ち込んでしまったのは申し訳なく感じています。従来の高校野球の応援は、学校の応援団や地域住民が主ですが、慶應高校の応援には高校関係者のみならず、海外から駆け付ける者もいるほど、塾員全体が熱を持って応援していました」
そう語るのは、スポーツ全般、特に野球に詳しい慶應義塾大学名誉教授の池井優氏である。
「また、慶應高校は神奈川県代表というより、オール慶應代表のように見られる部分がありました。これも従来の高校野球とは違ったチームと見られてしまう要素だったのではないかと思います」
さらに池井名誉教授は、慶應優勝に「違和感」を覚える人が一定数出た背景には別の要因もあったのではないかと指摘する。
「旧来の高校野球のスタイルにとらわれない慶應高校のような学校が優勝したというのが価値のある出来事だったのは間違いありません。しかし、チーム全体がこれまでの汗と涙の高校野球のイメージと乖離していたことが、反発を招いた面もあると思います。慶應義塾は自由な雰囲気をまとった組織で、傘下にある慶應高校・大学野球部も常識にとらわれない自由さが目立ちます」
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