日曜になると湧き上がる「張本勲ロス」…アンチもネット世論も巻き込んだ「喝!」と「あっぱれ!」の稀有な魅力とは

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日本中の少年に野球を教えたかった

 そして、過去の発言を謝罪するところも潔い。大谷翔平が花巻東高校から日本ハムに入った後は常に「二刀流ではなくどちらかにしなさい」と言い続けた。しかし、後に投手・打者両方で好成績をあげると過去の発言を撤回し「あっぱれ!」を入れるのである。

 そして、ハリーの「あっぱれ!」で一番好きなのは、「サンデーモーニング」司会の関口宏氏をも困惑させるものだった。MLBの試合だったのだが、フィールドに鳩が入ってきたことがあった。鳩はなかなか飛び立ってくれないため、試合は中断。ここでハリーは「あっぱれ!」を入れたのである!

 この時、私もさすがに何が何やら分からなかった。関口氏は「えっ? どういうことですか?」と張本氏に聞くと、彼は相好を崩し「野球が好きな鳩なんだね~!」と言ったのだ。いや、多分、フィールドにエサがあると思って来ただけであり、野球が好きな鳩というわけではないと思うが……。あと、仮に野球が好きだとしても「お前、カネ払ってねぇだろ!」と私は思ったが、このコメントが私のハリー愛を決定的にした。とにかく野球が好きなのだ。だからこそ、時々「バーチャル出演」をした。ハリーは少年野球のコーチを各地方都市で行い、その時はTBSのクルーが現場を訪れ、中継でハリーがスタジオにいるかのような演出をしたのである。日本中の少年に、野球を教えてあげたかったのだ。

 また、スポーツをするにあたり、道具を大事にしなかったり、グローブを地面やベンチに叩きつけたりする選手に対してかつて容赦なく「喝!」を入れていた。こうしたことからも、ハリーは実に「スポーツマンは規範たれ」といった感覚を持っているように思う。炎上を恐れ、言いたいことを言えない今の時代。それだからこそ私は「張本勲ロス」「ハリーロス」になっているのである。あまり共感されないだろうが、それは構わない。ハリーだって今の時代は批判ばっかりされているのだから。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。最新刊に『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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