【関東大震災100年】「富士山近くで稲妻が…」前兆はあった? 資料や記録に残る災害前に起きる異変の数々
資料に残る関東大震災の前兆現象
〈3、4ヶ月前、横浜港に近い下町の方で多数のネズミが道路を横切って移動するのを見た〉
〈15日前、カラスの大群が横須賀方面へ移動するのを見た(横浜)〉
〈15日前、埋立地にアリが各所に穴を作り出し、その活動が異常だった。異変の前兆かと新聞にも載った(品川区)〉
9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年に起きた関東大震災の発災日もでもある。午前11時58分に発生した地震は、マグニチュード7・9(推定)。死者・行方不明者10万5385人、37万棟以上の建物が全半壊や焼失する被害をもたらした。
冒頭で紹介したのは、諸々の資料を基にした、関東大震災の前兆現象である(東京消防庁監修「新 消防雑学事典 二訂版」より)。
「地震は地球を覆っている十数枚のプレート(固い岩盤)同士がぶつかり、地殻内にひずみが蓄積して起こります。前兆を探るには、地殻の動きを探ることが大事なのですが、マグニチュード9だった東日本大震災(11年)では、震災の3か月前から岩手県の温泉の井戸で、水位が10メートルくらい急に低下していたとの研究が発表されています。大きな災害では様々な前兆現象が記録・報告されています」(社会部記者)
前掲書には、関東大震災前に起きた地殻・気象などの異常現象も記されている。
〈以前は海水浴ができない海が、その年珍しく、遠浅になり、海水浴場になった(小田原市)〉
〈館山海岸で土地が隆起し島が陸続きになった(千葉県)〉
〈1時間前、ゴォーという大風が吹いて来るような音がした(練馬区)〉
〈5~10分前、遠くから地鳴りの音がした(新宿区)〉
〈2~3日前、上天気の午後、富士山の上あたりに稲妻が横に走り続けた(港区赤坂)〉
〈15時間前、蒸し暑い晩、上下に走る稲光りが、幾すじも光り、夜中続いていた(横浜市)〉
動物に予知能力はあるのか?
震災前の前兆として、動物の異常行動に関しては、1995年の阪神・淡路大震災でもいくつかの事例がある。発災は1月17日だったが、
〈前日、冬眠中のヘビがはい出してきた〉
〈普段見ないコウモリの群れが飛び交った〉
〈前日タイが大量にとれた。シャコが大量に浮き上がってきた(淡路島)〉(以上、前掲書より)
気象庁のホームページ「地震予知について」によると、動植物には、音、電気、電磁波、匂いなどに対する感知力が人間に比べ格段にすぐれているものがあることは知られているが、
「地震は、地中の広い範囲で、固い岩盤同士が、破壊し合い、ずれ合うエネルギーの集中や解放を伴うため、徐々に岩盤が変形し始めたり、地下水位が変動したりして、地震の発生前から非常に微弱で特異な音、電気、電磁波、匂いなどが周辺の地面や大気などに現れ、それを動植物が感じ取る可能性もあるのかもしれません」
ただし、地震の前兆現象も解明できておらず、動物たちの異常行動や反応については「科学的に説明できていない状況」だという。
「東日本大震災でも、1週間前にイルカの群れが茨城県鹿嶋市の海岸に打ち上げられたとか、震災当日、カラスが聞いたことのない鳴き声で飛び交っていたという事例があります。遡れば、過去の災害でも同様の報告がありますから、決して無視できるものではないと思います」(前出・記者)
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