閉所恐怖症の私が窓のない部屋で連日、取り調べられて…大川原加工機「女性社員」が証言する“警察庁公安部の恐ろしい手口”

国内 社会

  • ブックマーク

逮捕候補者だったAさん

 高田弁護士は語る。

「当初、公安部は、Aさんも逮捕するつもりだったのです。しかし、田村警部補が追い込みすぎて彼女がうつ病を発症してしまい、こちらはちゃんとした診断書も出した。このため警視庁は、公判段階で取り調べでの任意性が問われてまずいことになると判断して、彼女の逮捕だけは見送った経緯があるのです」

 また「田村警部補は経産省に出向していました。警視庁と経産省はまさにツーカーの関係だったのです。経産省が自分たちには責任がないとばかり逃げていますが、経産省の責任は重いのです」と指摘する。

 社長ら3人の冤罪が認められた後も残ったもやもやした気持ちを晴らしてくれたのが、捜査の不備を証言した2人の勇気ある警官だった。Aさんは筆者に「マスコミの力であの2人を守ってくださいね」と熱心に訴えた。

 Aさんが自殺未遂を図ったという報道があったため、怯えた様子で短時間だけの応対になるかと予測していた。だが、実際にお会いすると、非常に明るく快活な女性で、1時間半近く、終始はきはきと語ってくれていた。

 それでも、たとえ体の一部だけを写したものだとしても、インタビュー中の写真の掲載は難しいとのことだった。「特定されると家族に迷惑がかかるので」という理由だが、突然、自宅に踏み込まれ、連日、密室で強引な聴取を受けた心の傷は、容易に拭い去れるものではなかったのだろう。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[5/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。