ジュリー社長辞任で資産1000億円「ジャニーズ事務所」の今後は…新社長選びは2つのパターンが想定

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創業者と2代目の差…ジュリー氏の“お嬢様気質”

 いずれにせよ新社長選びは難航必至。また、新社長が決まろうが、ジュリー氏が支配力を行使する限り、安定政権になるかどうかは不透明だ。2019年に副社長に就任したものの、ジュリー氏との意見の対立などから、3年で社を去った滝沢氏の例もある。

 そもそもジャニー氏とジュリー氏の母親であるメリー喜多川元名誉会長(2021年死去、享年93)が他界した時点で、多数の芸能関係者が「会社の持続は困難になる」と見ていた。発掘と育成に長けていたジャニー氏と、政治力と経営力に長けたメリー氏の両輪で成り立っていたからだ。性加害問題が社会問題化しなかったのも、メリー氏の存在が影響していたと見られている。

「メリー氏はジャニー氏の性加害問題をなんとか封じようとしていた。ジャニー氏の行状はもちろん知っていて、周囲にこぼしていた」(芸能事務所幹部)

 ジャニー氏、メリー氏とジュリー氏の根元的な違いは、強引とも言える手段を使ってでも勝ち上がろうとしたか、お嬢様気質であるかだ。創業者と2代目の差でもある。

 ジャニー氏は性加害という問題を生む一方、美少年の発掘と育成に貪欲だった。メリー氏はテレビ各局の首脳を自宅で接待する一方、番組担当者には約20万円の高級紳士服のお仕立て券を中元・歳暮として贈り、食い込もうと躍起になっていた。2人はテレビ局に忖度させる環境もつくった。共演NGなどである。

 一方、ジュリー氏は10代の時にはTBS「3年B組金八先生(第1シリーズ)」(1979年)などに出演したものの、上智大外国語学部比較文学科(現・国際教養学部)を卒業し、フジテレビに嘱託として勤務。役員秘書を務めていた。

 そんな経歴もあり、メリー氏と違って“なりふり構わぬ売り込み”などは聞かない。テレビ局の現場クラスの社員とも飲みに行くような、フランクな一面もある。

 メリー氏とジュリー氏の違いが歴然となったのが、5月14日に動画で行った謝罪だ。その動画は性加害問題へのお詫びと受け止められず、火に油を注いだ。一方的だったからだ。

「マスコミや世論の動き方が分かっていたメリーさんなら、記者会見が出来るまで表に出なかった。ただし、会見をするのがメリーさん自身だったかどうかは分からない。幹部にやらせたかも知れない」(芸能事務所幹部)

資産価値の総額は推定1000億円以上

 一方、ジャニー氏とメリー氏は会社に莫大な資産を残した。これも全てジュリー氏のものである。資産は不動産だけでも大きい。本社ビル(東京都港区)は地上6階建て。資本金1000万円で本社社員200人程度の会社なのだが、その社屋にはとても見えない。

 それもそのはず。本社ビルは2018年まで、資本金1億円の大手レコード会社「ソニー・ミュージックエンタテインメント」の本社だった。現在の資産価値は推定100億円以上。芸能事務所で一番立派な本社ビルである。

 劇場「東京グローブ座」(東京都新宿区)も所有している。客席は3階まであり、収容人数は約700人。最上質の音響設備を誇る。

 ほかに旧本社ビル(東京都港区)など、少なくとも都内に8つのビルと劇場を持つ。すべて1等地にあり、資産価値の総額は推定1000億円以上。ジャニー氏、メリー氏がやり手だったことがあらためて分かる。

 ジュリー氏が芸能ビジネスから撤退し、この資産を活用して、新たな事業に乗り出す可能性もある。そもそもジャニー氏とメリー氏の他界後、レコード会社幹部らの間では「ジャニーズ事務所はジュリーさんによる資産管理会社になるのではないか」と、囁かれていた。発掘と育成が不安視されていたからである。

 それを任されていた滝沢秀明氏はもういない。たとえジュリー氏から新社長へのバトンタッチがスムーズに行われようが、同社の先行きは決して明るくない。

「嵐」の独立問題も俎上に上っている。ほかにも独立説が流れているタレントがいる。社長交代後も同社の揺れは続く。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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