「企業防衛」弁護士が指南 乗っ取り屋「アクティビスト」に克つ法術
法整備の遅れ
続けて、翌21年の1月、鉄鋼最大手の「日本製鉄」がワイヤロープ製造を手掛ける「東京製綱」へのTOBを表明。東京製綱の経営陣はそれに賛同せず、敵対的TOBへと発展した末に成立した。同じく9月には、「SBIホールディングス」が「新生銀行」に対する敵対的TOBを成し遂げている。
「主だったそれら以外にも買収劇は相次ぎ、アクティビスト、敵対的TOBといった言葉がメディアに躍るようになりました。なぜ、日本の証券市場では、アクティビストの勢いが増しているのか。欧米に比べて法整備が遅れているため、アクティビストが活動しやすい環境だからです」
日本では、3分の1超の株式を取得する場合でも、市場内ならTOBを実施する必要はない。EUでは国によって若干の差はあるものの、市場内、市場外を問わず、TOBが義務づけられている。しかも、TOBを一旦開始したら、応募の全株を買い付ける決まりである。
「日本では株主総会で議決権を行使する株主の割合は8割程度です。EUのように全株買い付け義務を課されていないため、アクティビストは4割の株さえ押さえれば、企業を支配することができる」(つづく)
「週刊新潮」2023年8月31日号「MONEY」欄の有料版では、敵対的TOBの事例とともに、「5%ルール」「日本版ウルフパック」の現状などを詳報する。
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