10勝「バウアー」は近年の外国人投手でレアな存在 MLB時代とガラリと変わった点がある
「投げさせてくれ!」
しかし、日本のファンを惹きつけたのは知性的な立ち振る舞いよりも、「投げる」ことが本当に好きで、その熱量も伝わってくるような投球スタイルなのかもしれない。
「走者を背負った場面を脱すると、雄叫びをあげてガッツポーズもしています」(前出・同)
中4日で登板した8月25日の中日戦でのことだ。8回を投げ終えた時点で球数は126球、スコアは8対2、完全な楽勝ムードだった。しかし、ここからDeNA打線の「長すぎる攻撃」が始まった。中日・近藤廉(24)が釣瓶打ちにされ、“10失点の大乱調”だった。そのDeNA打線の攻撃中、バウアーの打順(9番)も近づいてきた。
バウアーは左手にグローブをはめて、三浦大輔監督(49)のそばに行き、右手でグラウンドのほうを指差した。「9回も投げさせてくれ」のジェスチャーだ。三浦監督は腕組みをしたまま、首を横に振る。バウアーがもう一回、指を差す。三浦監督が強めに首を振った。
「三浦監督は引きませんでした。攻撃のイニングが長くなったため、もう一度肩を作らせるのは負担になると考えていました。一方のバウアーは救援陣を休ませたいとし、まだ投げ足らないと思っていました」(前出・チーム関係者)
その「投げ足りない」とするバウアーの気持ちは情熱であり、同時に「投球技術」でもあるようだ。25日は8回126球を投げた。その前は20日の阪神戦に先発して敗れたが、8回120球を投げている。中4日で120球以上を続けて投げ、「投げ足りない」とするスタミナも凄いが、ゴロアウトや凡フライの打ち損じも誘い、少ない投球数で3アウトを獲るイニングもあった。また、阪神戦の前、15日のヤクルト戦では7回109球、9日の中日戦も7回108球でまとめている。
「力勝負に出て三振を奪いに行くときもあります。変化球で打ち損じを誘うイニングもあれば、打者2巡目以降は勝負球に使う変化球を変えるなどして、投球パターンを相手打線に読ませないようにしています」(前出・スポーツ紙記者)
こうした投球テクニックがあるからこそ、長いイニングが投げられるのだろう。
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