自分の親友と不倫する夫を妻はなぜ止めないのか 女ふたりの意地の張り合いに46歳夫は「現実から逃げたい。でも逃げられない」
妻は「私は離婚しないから」
ともあれ、独身となった容子さんの部屋で、知之さんは彼女と関係をもった。部屋に来たときからそうなるかもしれないと思っていたという。遣らずの雨に感謝するしかなかった。
「私は仁美を傷つけるためにこうしたわけではないと、容子さんはしつこいくらいに言っていました。それはわかっている。僕たちはこうなる運命だったんだと思うと言いました。『私たちは、仁美を取り合っているのかしら』と彼女は不安そうでした。『僕と仁美は家族だ。恋愛じゃない』『じゃあ、私とあなたは何?』『恋愛、のようなもの。恋愛というほどやさしい関係ではないかもしれないけど』などというやりとりがありました。容子さんのことは好きだけど、なんというのか恋愛とか不倫という言葉はそぐわないんですよ。ただ、仁美が容子さんから離れられなかったように、僕もまた容子さんから離れられないと確信があった」
それが容子さんの女性としての魅力なのか、あるいは仁美さんと長い間、確執と友情を交換しあってきたがゆえの引力なのか、知之さんにはわからないという。
その日遅くに自宅に戻ると、仁美さんが「容子と寝たでしょ」と言った。彼が何も言えないでいると、「いつかそうなると思った」と妻はサバサバした口調になった。
「言っておくけど私は離婚しないから。容子に略奪されてたまるもんですかって仁美は激しい口調で言うんです。だったらなぜ、僕と容子さんと近づけるようなことをしたんだと思わず妻を責めてしまった。『自分でもわからない』と仁美は嘆いていました」
「仁美は意地になってる」
翌週末、知之さんは仕事があって出かけた。帰宅すると容子さんがいた。仁美さんと容子さんが娘たちと食事をしている様子を見たとき、知之さんは自分がこの場にいていいかどうか判断に苦しんだという。
「娘たちが部屋に引き上げると、仁美が『私たちは離婚しないから』と容子さんに告げた。明日は天気だから、というのと同じ口調だった。容子さんは『わかった。私も別れないから。知之さんもたぶん私とは別れられない』と似たような口調で言ったんです。いったいどうなっているんだかわからない。僕の意志はないのかとつぶやきました。女性ふたりはじっと僕を見つめていた。とても結論を出せる状況ではありませんでした」
その日も妻は、容子さんを自宅まで送ってあげてと言い、送り出すと玄関の鍵を閉めた。容子さんにどういうことなのかと聞いたが、「仁美は意地になってるんだと思う」と言われた。女ふたりの意地の張り合いに自分が巻き込まれているのは耐えられなかった。それなのに、知之さんはまた容子さんの自宅に上がり込んだ。
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