認知症に希望の新薬! 診断を受けた家族に「絶対にやってはいけないこと」とは? 臨床の最前線に立つ医師が徹底解説

ドクター新潮 ライフ

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原因を先に特定できることがほとんどない

 いかがでしょうか。「物忘れがひどくて、人格もすっかり変わって、場合によっては幻視もある」など、種類の異なる認知症の症状をごっちゃにし、認知症を無理やり「悲劇的な病気」と理解している人も多いのではないでしょうか。

“種類が重要”というのは「がん」に置き換えてみると分かりやすいと思います。皆さんが医師から「がんです」と宣告されたら、きっと真っ先に「どこのがんですか?」と確認をするでしょう。同じ初期のがんでも、胃がんであれば「切ればなんとかなる」と思うでしょうし、すい臓がんなら「覚悟して治療しないといけない」と決意する必要が出てくるかもしれません。認知症も同じで、「レビー小体型」なら比較的しっかりとした療養生活を送れる可能性がありますが、「アルツハイマー型」なら、物忘れなどを覚悟しなければなりません。

 ただ、認知症が厄介なのは原因を先に特定できることがほとんどないということです。大体、物忘れや仕事・生活上の失敗、幻覚など、それぞれの認知症の症状が出て「おそらくこの認知症だろう」と宣告される。それぞれの認知症に「型」とついているのはそのためです。例えば、アルツハイマー型でも、全員がアルツハイマー病を発症しているわけではなく“アルツハイマーっぽい”という程度なのです。

アルツハイマー型と診断されても…

 従って、アルツハイマー型と診断されても、実際は「高齢者タウオパチー」や「嗜銀顆粒性認知症」と呼ばれる認知症であることも多々あります。これらの認知症は80代や90代の高齢者に多く、物忘れは生じるのですが、身の回りのことは長期間できるため、軽度の症状のまま天寿を全うされる方も多い。アルツハイマー型と診断されても、本当のアルツハイマー病よりも症状が軽く済むケースがあるのです。

 多くの患者はアルツハイマーかどうか早期に白黒つけることを望みます。でも、初期では脳の萎縮も進みませんから、MRI検査を行っても確定診断をするのは難しい。保険適用外の「アミロイドPET検査」でアミロイドの蓄積を調べれば確定診断できる場合もありますが、それで治療方針が変わることもないため、あまり意味がありません。認知症は根治できる病気ではありませんから、治療は主に対症療法。どの「型」の認知症かが分かれば十分ともいえるのです。

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