「スマホがないなら死んだ方がマシ」「小学生で親の看病と姉妹の世話を…」 小中高生の自殺が激増! 背景にスマホ依存か
近視の重症化
さらにこれから明らかになると思われるのが、近視の重症化だそうだ。一般的には、近視はそれがはじまった年齢から20歳くらいまでしか進行しないとされている。従ってこれまでの近視は中高生くらいで発症することが多かったので、進行の期間は数年といったところだった。だが、最近は未就学児が発症することも多く、そうなると進行する期間は倍の長さになり、その分症状も重くなる。
また、学校のいじめにもスマホやタブレットとの関係性が見いだせるという。前出の竹内は語る。
「小学生がスマホやタブレットを使うようになったのは、大人より少し遅れて2010年代の半ばからです。実は、その頃から、小学校でのいじめの認知件数が増加しているのです。現場の先生方に聞くと、最近の特徴として軽微なトラブルの多くがオンライン上で起きているのだといいます。今の子供たちは学校から帰った後、オンライン上で待ち合わせをしてゲームやSNSを一緒に楽しみます。公園などで直接会って遊ぶのではなく、アバターを介して遊ぶのです。けれど、アバターを通した人間関係は現実のそれとは違うので、ゲームの中で簡単に相手を口汚くののしったり、SNSで余計なことを言ってしまったりする。それで相手との関係が悪くなり、翌日以降に学校でのいじめやケンカになったりします」
ゲームやSNSの中では当たり前のように暴言が飛び交い、根拠のないうわさが広がっている。そこで起きたトラブルが学校に持ち込まれ、いじめを生むようになっているのだ。
増える神経性やせ症
もう一つ、コロナ禍を経て注目されている心の問題がある。神経性やせ症(拒食症)だ。
国立成育医療研究センターが全国30医療機関(31診療科)の調査を行ったところ、コロナ禍前と禍中で比べると、神経性やせ症の初診外来患者数が1.6倍、新入院患者数が1.5倍になっていることが明らかになった。
神経性やせ症は、主に女性がストレスをため込んだ結果として現れる病気とされる。家庭や社会で困難に陥ってアイデンティティーを見失った結果、やせることでしか自分を表現できなくなったり、そうすることでしか人に認めてもらえないと考えたりして拒食が進んでしまうのだ。
懸念すべきは、近年の神経性やせ症は若年化が進んでいるという点だ。そこには、先述のスクリーンタイム増加の影響が少なからずあるという。
国立国際医療研究センター国府台病院に河合啓介という医師がいる。河合はコロナ禍の2022年1月に、同病院内に厚労省の事業として「摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン」を開設した。彼は言う。
「神経性やせ症は明らかに若年化していて、かつて患者さんの中心は10代後半から20代の女性でしたが、今では小学生も珍しくなくなっています。彼女たちの病気を深刻化させている要因の一つがSNSです。SNSでは極端にやせた女性がもてはやされる傾向にあり、女の子がそれに影響を受けてやせた自分の画像をアップすれば、たくさんの“いいね”がもらえて自尊感情が刺激されます。ハッシュタグで神経性やせ症の子同士がつながることもあるでしょう。多くの患者は、孤独感を自覚しており、“いいね”はそれを埋める手段の一つになる。これらが病気をエスカレートさせることもある」
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