「慶應高」“夏の甲子園優勝”で盛り上がるOBに、なぜ“冷たい視線”が集中するのか そこはかとない“違和感”の正体(ネットニュース編集者・中川淳一郎)
仕事をさぼって観戦
慶應義塾高校野球部、甲子園大会優勝おめでとうございます。さて、私は基本的に「〇〇大学は嫌い」とは言わないのですが、なぜか慶應義塾大学だけは昔から嫌いなんですよね。アメフト部員が悪質タックルをしたり、大麻や覚醒剤を使用していたとしても別に日大は嫌いではないですし、アホ政策ばかりする厚労官僚を輩出する東大も嫌いではない。
【画像】優勝でアクセス殺到か 学内の風景が楽しめる慶應義塾のトップページ
しかし、不思議なことに慶應は嫌い。理由は彼らが「謎の一体感」を持っていることに他ならない。そして、その根底には「謎の選民意識」がある。この2つがあるからこそ、今回の慶應高校の大躍進から見えた塾員様(OB)の盛り上がりが鼻についたのでしょう。三田会様のネットワークを駆使して大応援団を決勝戦に送り込み、相手の仙台育英の攻撃中であろうが慶應の応援をする。知り合いの大手企業社員から聞いたのは、会議室に塾員が集まり、仕事をさぼって決勝戦を見ていたということです。終了後は抱き合って肩を組んでナントカカントカという応援歌を歌う。あぁ~、気持ち悪い。
不思議なもので、慶應卒で仲がいいのは3人しかいない。フリー編集者のH君と、私の会社でバイトをしていたK君、そして小学館のT氏。T氏は慶應SFCのため、ちょっと一味違う。三田会の中でも下に見られているらしいです。一方、早稲田卒とは仲がいい。これまで新潮社で付き合ってきた編集者とは全員気が合いましたが、なんと早稲田出身者が5人、立教出身1人、京大出身1人。友人や仕事仲間も早稲田が多く、挙げ句の果てには早稲田卒の女性と結婚してしまった。
学生なのに西麻布へタクシーで
恐らく世の中には「慶應的なもの」「早稲田的なもの」というのがあるのでしょう。早稲田の場合は除籍が一番エラくて、中退が次にエラい、留年はそれに次ぐ。学閥なんてどーでも良く、早稲田出身の論客同士はバシバシと罵り合う。会社に入っても特に群れを作らず、学生時代の話などしない。ただ、「えっ、社会科学部なんですか! 私たち、妙に馬鹿にされていましたよね」と、同学部の場合、多少は過去の話題をする。あとは「早稲田祭は左翼が牛耳っていてムカついた」とかそんな話が出る程度です。
さて、私は慶應に対し、常に何らかの違和感を覚えてはいました。それが決定的になったのは、1996年10月1日、無事、転がり込んだ会社の内定式に参加した時のこと。東京・田町の本社で宴が開催されたのですが、二次会へ行くことになりました。慶應の学生が中心となって二次会が開催されることになったら、携帯電話を使ってどこかを予約している。こちとら携帯電話なんて持っていませんし、飲み屋を予約するなんてことはなかった。行き当たりばったりで空いている店に入ることしかしていなかったのだから。さらにギョーテンしたのが、予約した店が西麻布で、しかもタクシーを使ったこと! えっ? ワシ、タクシーなんて贅沢なモンに乗ったことねーぞ! と思うわけです。この日、JR中央線で国立駅に停めた自転車を漕ぎ、多摩地区の畑だらけの道を通る時、コオロギが鳴く音を聞きながら明確な敗北感があった。「慶應、ヤバい」と。さらには「こんなヤツらが多い会社にオレは入るのか……。先生も勧めてくれたから留年したうえで、来年9月に大学院を受けるか……」とさえ思ったのです。
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